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日外会誌. 82(5): 429-434, 1981


原著

血清亜鉛値と赤血球内亜鉛値との関連に関する実験的研究

三重大学 医学部外科学第2講座(指導:鈴木宏志教授)

竹中 巧

(昭和55年11月19日受付)

I.内容要旨
経静脈栄養施行中の合併症の一つである亜鉛欠乏症は,その経過において症状の消長と血清亜鉛値とが必ずしも並行しないことを経験する.そこで血清亜鉛値と組織内亜鉛含量との間に相関があるか否かをみる目的で, JCL-SD 系ラットを用い9週間の亜鉛無投与・ヒスチジン溶解液投与により,血清亜鉛値を対照群の約1/4~1/3 にまで低下させた群(ヒスチジン群)と, 10週間の2,000ppm 亜鉛添加食投与により対照群の約3/2~5/2倍まで増加させた群(過剰群)を作製した.これらの各群について組織内亜鉛含量の指標として赤血球内亜鉛値を用いた.また通常のラット食にて飼育した群を対照群とした.
これら三群について血清亜鉛値と赤血球内亜鉛値との関係, 赤血球内亜鉛/血清亜鉛比について検討した.
赤血球内亜鉛値は,三群に有意差はなく,血清亜鉛値との間にも相関関係はなかつた.
赤血球内亜鉛/血清亜鉛比は,対照群に比してヒスチジン群では有意に高く,過剰群では低いことから,血清と赤血球間には単なる濃度勾配による亜鉛の移動は考えられず,赤血球内亜鉛値は,亜鉛欠乏症のパラメーターとはなりえないことが示唆された.

キーワード
経静脈栄養法, 亜鉛欠乏, 赤血球内亜鉛値


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