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日外会誌. 82(4): 386-395, 1981


原著

Endotoxin投与による肝の超微形態学的研究
-特にlysosomeの電顕酵素組織化学を中心として-

日本医科大学 大学院学生(主任:代田明郎教授)

笹本 良信

(昭和55年11月12日受付)

I.内容要旨
Endotoxin (ET)投与時のラット肝のlysosome の変化を,主として電顕酵素組織化学的に研究した.すなわち, ラットの尾静脈にLD50のETを投与し, 経時的に脱血屠殺し, 生化学的および酵素組織化学的にlysosome ならびにその酵素(Acid phosphatase (ACPase),β-glucuronidase) の変動を検索し以下の成績を得た.① 血清ACPase は, ET投与後3時間頃まで著しく増加し, control のほぼ3倍の値に達したが,以後は漸滅して8時間後にはcontrol値に復した.②光顕的観察により, ET 投与3時間後に肝小葉周辺部の肝細胞に好酸性変性,小血管の血栓を,8時間後には同部に出血壊死を認めた. ③β-glucuronidase による光顕組織化学的検索では, ET投与早期では, Kupffer細胞,肝細胞のlysosomeに強い活性を認め,それ以後は, Kupffer 細胞における活性は減弱したが,肝細胞ではやはり強い活性を示し, 6時間以後は,その活性は減弱する傾向にあつた.④ 電顕的観察では, ET 投与2時間後より, lysosome の著しい増加,一部ですでに膜の破壊像を認め, 3時間後には微小血栓形成を認めた.⑤ACPaseによる電顕酵素組織化学的検索により, ET投与による肝細胞のlysosome の形態は次の4型に分類された. 1) Primary lysosome (I型), 2) Autolysosome (II型), 3) Phagolysosome (Ill型), 4) ACPase活性が同心円状に拡がり内部にmyelin様構造物を含む (IV型). ET投与により肝細胞のlysosomeはI型からIV型に順次移行する傾向がみられ, 2時間後では, IV型lysosomeがmicro bile canaliculiに流入, さらにはDisse腔より直接sinusoidに流入せんとする所見を得た. 血清ACPaseがほぼcontrol値に復する8時間後では,II~ IV型は減少し, I型が漸時増加した. Kupffer 細胞ではIV型はみられなかつた.したがつて,肝におけるET処理にはKupffer細胞のみならず, 肝細胞も少なからず関与しているものと考えられた.

キーワード
Endotoxin shock, Lysosome, 電顕酵素組織化学, Acid phosphatase, β-glucuronidase


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