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日外会誌. 82(3): 203-214, 1981


原著

腫瘍の凍結免疫に関する基礎的研究

順天堂大学 医学部第1外科学講座(主任:城所 仂教授)

市川 純二

(昭和55年8月29日受付)

I.内容要旨
Donryuラットに腹水肝癌AH109A を用い凍結免疫に関する基礎的研究を行つた. 実験目標として,1) 腫瘍を完全に破壊する凍結条件の設定.2) 腫瘍が単発であり凍結治療後,非担癌状態になつたときの凍結免疫の発現,強さ,持続期間についての検討.3) 凍結部以外に腫瘍が存在し,凍結治療後も引き続き担癌状態にある場合の凍結免疫の発現.4) 凍結治療と外科切除との効果の比較についての検討を行い,以下の結論を得た.
I. 腫瘍を完全に破壊する凍結条件を,局所再発率により検討すると,平均直径約1cmの腫瘍において液体窒素による直接接触法では,40秒間以上であつた.40秒間凍結時の腫瘍内最低温度は-170℃,解凍時間は19分間であつた.
II. 腫瘍凍結後,非担癌状態における凍結免疫の発現を試験接種拒絶率よりみると, 2週目よりおこり4週目で最強となり,それ以後徐々に低下しながら7カ月目まで続き, 10カ月目では消失していた.
またMITにおいては凍結治療群は担癌群,正常群に比べて有意に強いmacrophage遊走阻止効果を示した.
III. 凍結治療後,担癌状態下での凍結免疫を, 腫瘍増殖曲線, 生存期間, MIT,組織像で検討した結果,軽度の免疫発現を認めた.
IV. 担癌状態における凍結治療と外科切除との効果比較を,腫瘍増殖曲線,生存期間で検討した結果,凍結治療群の方にやや延命効果が認められた.

キーワード
凍結免疫, 凍結条件, 凍結手術, 腫瘍免疫, 実験腫瘍

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