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日外会誌. 82(3): 193-202, 1981


原著

凍結免疫リンパ球移入による癌受動免疫療法の基礎的研究

順天堂大学 第1外科学講座(主任:城所 仂教授)

望月 智行

(昭和55年8月15日受付)

I.内容要旨
癌の凍結治療により,腫瘍特異免疫が誘導されるという実験報告を立証するため,腫瘍凍結を行つた第1のラットより末梢リンパ球を分離し, これを第2のラットに移入して,受動免疫が成立するか否かを検討した.また,この凍結治療リンパ球を担癌体に移入して,腫瘍増殖抑制効果を示すかどうかを観察し,癌受動免疫療法の基礎的実験を行つた.その結果,凍結治療リンパ球移入群では,担癌ラットリンパ球移入群,正常ラットリンパ球移入群に対し有意に強い腫瘍移植抵抗性を示した.ついでリンパ球を移入された第2のラットの末梢リンパ球を分離してMITを行つたところ,他の2群に対しmacrophage の遊走を有意に抑制していた. これらの結果より,第1のラットに凍結活動免疫が成立したこと,また,リンパ球の移入により抗腫瘍性の伝達が可能であることが証明された. また,受動伝達された抗腫瘍効果は即効的で, リンパ球移入直後より発現し,7カ月後に消失した. 凍結治療リンパ球1×107個を移入したときの抗腫瘍効果では,腫瘍細胞約1×105個の拒絶が可能であつた.
次に,担癌ラットに凍結治療リンパ球を移入したところ,強い腫瘍増殖抑制と平均生存日数の明らかな延長が認められた. この効果は, 移入リンパ球数1×107個以上の移入群ではじめて発揮され, また, リンパ球1×107個1回移入群より3回移入群に増強効果が認められた. これにより, 腫瘍増殖抑制効果と移入リンパ球の量との間に,dose dependentな傾向のあることが示唆された. 組織学的検索では, 凍結治療リンパ球移入後,著明な小円形細胞浸潤が出現し,ひきつづいて腫瘍細胞の変性,壊死,組織の線維化が認められた.

キーワード
凍結免疫, 受動免疫, リンパ球移入, GVH反応

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