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日外会誌. 82(2): 169-180, 1981


原著

大腸癌の微細血管構築
-病型別にみた組織像との比較検討-

長崎大学 医学部第1外科学教室

下山 孝俊 , 北里 精司 , 高木 敏彦 , 野川 辰彦 , 平野 達雄 , 原田 達郎 , 吉田 千里 , 中山 博司 , 橋本 茂廣 , 藤井 良介 , 瀬戸口 正幸 , 石川 喜久 , 小武 康徳 , 石井 俊世 , 内田 雄三 , 三浦 敏夫 , 辻 泰邦

(昭和55年6月30日受付)

I.内容要旨
大腸癌の発育,形態,転移などにおける血管系の役割を知るために,摘出標本に血管造影を行ない,超軟X線撮影による腫瘍内微細血管構築について病型別に組織像と対比して検討した.
検索材料は過形成性ポリープ9個, 腺腫11個,早期癌9病変(Ip3,Is 3,IIa 3),進行癌67病変(1型6,2型45,3型16,4型1)である.(A)過形成ボリープは粘膜血管が正常に比べやや伸長しているが,腺腫は細胞異型に準じて不整蛇行し,sm 血管の増生,拡張がみられた.(B)早期癌. Ip,Is ともに高分化腺癌で腫瘍内血管は豊富で腺腫の異型性の強いものとは鑑別困難,IIaではsm血管の増生,拡張がみられ,中分化型のsm 癌では腫瘍内血管が繊細で不整なのに対し,高分化m癌では垂直で整つた分布を示し血管密度も高い.(C)進行癌, 1型ではpm 癌は腺管配列が整い放射状~束状分布を示すが,SS 癌は腺管配列不整いで太長い血管が混在して糸屑状を呈し血管密度が高い.大小血管が絡みあつて糸玉状を呈した例では癌細胞が結節状に浸潤増殖し,中心に壊死巣がみられ微小循環障害が考えられた. 2,3型では潰瘍部は血管密度が低く,周堤部で既存血管の圧迫と新生血管で密度が高く,間質成分の少ない高分化腺癌が多い.しかし,これらは浸潤範囲及び組織型により異なり,深達度pmでは束状,ちぢれ状,糸屑状,ss以深では枯れ枝状,糸玉状のものが多くなり,壁外血管破壊像も高頻度にみられた.腸間膜附着部側の癌は潰瘍底が急峻で血管密度が低く,右結腸癌,とくに盲腸癌は圧排性増殖を示しavascularである.血行性転移例では壁外血管の異常が著明で, 腫瘍内は壊死を伴つた糸玉状血管がみられ,これらが血行性転移が成立する場になりうると考えられた.
以上より大腸癌の微細血管構築は,癌の発育, 浸潤様式,組織型とくに間質増生の程度を反映して各病型別に特有な像がみられた.

キーワード
大腸癌, 微細血管構築像, microangiography, 癌の発育浸潤, 血行性転移

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