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日外会誌. 82(1): 96-107, 1981


原著

単純性イレウスの病態におよぼす腸管内細菌の影響
-とくに無菌動物を使用して-

日本医科大学 第1外科学教室(主任:代田明郎教授)

別所 昭憲

(昭和55年6月30日受付)

I.内容要旨
外科臨床上よく遭遇する単純性イレウスの死因に関しては従来より閉塞上部の腸管拡張による水分,電解質の喪失が主因をなし腸管内細菌ないしはその毒素とその死因ないしは病態との関係はほとんど論じられていない.
そこで今回著者は無菌動物を対照とし,他の1群にはマウス糞便由来の好・嫌気性菌を投与し,既知の細菌による人工腸内細菌叢を作製した混合汚染群を用いて単純性イレウスの死因ないしは病態と腸管内細菌ないしはそのendotoxin との関連性について研究し以下の結果を得た.
単純性イレウス時には閉塞上部腸管内の細菌が増殖し,腸管内の1次胆汁酸が2次胆汁酸へ変換され,この組織障害の強い2次胆汁酸は腸管のmucosalbarrier を著しく障害し,腸内細菌由来の門脈血中内因性endotoxin は増量,肝へ移送されるendotoxin も増量し,イレウスによる肝障害とあいまつてportal endotoxemiaからsystemic endotoxemiaと発展したものと推察され,単純性イレウスにおいても腸管内の細菌ないしはendotoxinがその病態ないしは死因と密接な関係を有している事実の一端を明らかになし得たものと考える.

キーワード
無菌動物, 単純性イレウス, 腸管内細菌, Endotoxin, 胆汁酸


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