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日外会誌. 82(1): 86-95, 1981


原著

膵広範切除後の脂質代謝の変動
特にSandmeyer型糖尿病について

三重大学 医学部第1外科学教室(指導:水本龍二教授)

冨川 一郎

(昭和55年5月7日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用い主膵管を損傷しないように全膵の50%以上を切除し,術後経時的に経静脈的糖負荷試験を行い,耐糖能の変化を観察するとともに血清脂質の推移を検索し,さらに postheparin Iipolytic activity(以下PHLA)を測定し,併せて肝内脂肪の変化も観察した.
全膵の90%以上の膵切除では術後早期より糖尿病を発生し,血糖値の上昇に伴い血清脂質は高値を示し,また, PHLAは術後早期より低下しており,肝内脂肪沈着も高度であつた.
70~90%膵切除では術後早期の耐糖能や脂質代謝は, ほぼ正常に近く維持されているが, 次第に耐糖能は低下し,血清脂質は増加しはじめ,PHLA の低下を来たす.ついでさらに耐糖能は低下し,いわゆる,Sandmeyer型糖尿病を発現すると血清脂質はさらに増加して高脂血症を示し,PHLA の低下は著明となり肝内脂肪の沈着も著しかつた.
70%以下の膵切除では耐糖能の低下や高脂血症は認められず,PHLAの変化も軽度であり,肝内脂肪沈着も認められなかつた.

キーワード
膵広範切除, 脂質代謝, Sandmeyer型糖尿病, 脂肪肝, postheparin lipolytic activity

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