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日外会誌. 82(1): 69-74, 1981


原著

Fallot極型に対するconduit procedure後に,全身感染,DICを合併した1治験例

1) 名古屋大学 第1外科
2) 名古屋大学 第1内科
3) 名古屋市立大学 小児科

阿部 稔雄1) , 弥政 洋太郎1) , 清水 健1) , 村瀬 允也1) , 鯉江 捷夫2) , 野尻 とき子3)

(昭和55年5月7日受付)

I.内容要旨
Fallot極型に対してconduit procedureを施行した症例が,術後に全身感染症, DICを合併したが,幸いに治癒させることがきたので,その経過,治療を中心に報告した.
患者は,乳児期にBlalock手術をうけた16歳の男性である. 手術は,心室中隔欠損をテフロンパッチで閉鎖し,右室一肺動脈間にHancock生体弁つき人工血管を縫着した.
術後は順調に経過するかに思われたが,術後7日に左無気肺を合併,その頃から心不全,呼吸不全が増悪し,術後第14日から右胸腔に液貯留を認め,術後第32日に,胸水に,細菌培養で緑膿菌,グラム陰性桿菌を認めた.
胸水に細菌を検出した2日後,悪寒戦標を伴う高熱を生じ,その3日後に肺水腫となりレスピレーター装着,その後,ショック状態,意識の軽度混濁,全身出血斑,腹部膨満,呕吐,下血を生じ,臨床的に敗血症, DIC の状態と考えた.動静脈血の細菌培養で細菌は検出されなかつた,胸水では, Pseudomonas aeruginosa, Flavobacterium, Alcaligenes facalisが検出された.
緊急的に呼吸循環動態の改善を計ると共に,カルベニシリン20g/日, トブラマイシン180mg/日, ミノサイクリン200mg/日を投与し, DICに対しては, ヘバリン15,000~20,000単位/日, アプロチニン40万単位/日,新鮮血,濃厚血小板液,新鮮凍結血漿を使用した. 約3週間の高熱期を経て解熱し始め,血小板数1万前後の時期が約10日間続き,その後DIC の諸症状は徐々に改善した.点滴静注による抗生物質投与は,術後約6カ月にわたり,レスピレーターは約4カ月半使用せざるをえなかつた.術後7カ月で退院したが,生体弁,人工血管,テフロンパッチに,細菌感染を疑う所見はなかつた.
起炎菌が,最近問題となつている非醗酵グラム陰性桿菌であり,全身感染, DICに移行したが,幸いに後遺症なく治療させることができた.

キーワード
Fallot 極型, conduit procedure, 敗血症, DIC

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