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日外会誌. 82(1): 51-68, 1981


原著

胃血行遮断による胃血流および胃液分泌の変動に関する実験的研究

横浜市立大学 医学部第2外科学教室(指導:土屋周二教授)

大橋 俊文

(昭和55年5月2日受付)

I.内容要旨
胃血行遮断が,胃血流や胃液分泌機能に,どのような影響をおよぼすかを,明らかにする目的で,イヌにおいて実験を行つた.
左胃動脈結紮群,左胃および左胃大網動脈結紮群,左右胃および左右胃大網動脈結紮群について,胃血流と胃液分泌を測定し,結紮前の対照群と比較検討した.
胃血流量およびその分布は, Sr85-microsphere法により,胃局所粘膜血流の経時的変化は交叉熱電対法により測定した.
遊離塩酸量はbetazole hydrochloride (histmin)を持続投与後,胃液を採取し,Topfer Michaelis法で測定した.
histimin投与により,正常胃全血流量は有意の変化はないが, 胃血流分布には胃体底部の有意の増加と,幽門前庭部の有意の減少を認めた(p<0.05 ).
histimin刺激下で,左右胃および左右胃大網動脈を結紮すると, 一過性に胃液分泌は減少するが, 30分後には回復し結紮前の胃液分泌と有意差がなかつた.
左右胃,左右胃大網動脈紮2週間後では,結紮前と同様の胃液分泌能があり,血流量も結紮前の約80%に回復していた.
以上の結果より,左右胃動脈・左右胃大網動脈の胃血行同時遮断により惹起された,胃血流不全および胃酸分泌機能の低下はきわめて一過性であり,30分後には低下を示さないことが確認された.

キーワード
胃血行遮断, 胃血流, 胃液分泌, マイクロスフェア, 交叉熱電対


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