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日外会誌. 81(12): 1520-1535, 1980


原著

新鮮同種静脈移植における仮性内膜栄養血管の形成過程に関する実験的研究

日本医科大学 第1外科(指導:代田明郎教授)
九州大学 医学部第2外科(指導:井口潔教授)

石川 芳照

(昭和55年4月28日受付)

I.内容要旨
犬大腿動脈に対する新鮮同種静脈パッチ移植をおこない,移植片仮性内膜の治癒過程,とくに栄養血管の新生過程について,組織学的および走査電子顕微鏡学的に検索し,次の結果を得た.
1. 移植片内面に付着した壁在性血栓に対する紡錘形細胞の浸潤は,移植後5日目より認められた. これら紡錘形細胞の浸潤は,宿主動脈内膜からおこるものと,移植片と宿主動脈との接合部において,外膜側から及ぶものとが認められた.
2. 移植片内面における内皮細胞様細胞の新生は,移植後5日目の標本から認められ,内皮細胞様細胞は宿主動脈内細胞に由来して形成されたものと考えられた.
3. 移植片外膜内の栄養血管には,移植後10日目から赤血球の含有が認められ,栄養血管に対する血流再開が起つたものとみなされた.
4. 移植後10日目の標本では吻合部に近い壁在性血栓内に,移植後14日目の標本では仮性内膜内に,血管内腔へ開口する栄養血管の新生が認められた.内腔側由来の新生栄養血管は吻合部近くで開口するものが多く,仮性内膜の深層まで分布していた. しかし,外膜側栄養血管との交通は認められなかつた.
5. 走査電子顕微鏡による観察では,移植後30日および100日目の標本で, 仮性内膜面に開口する口径20~60μ の円形の穴が多数認められ,これは血管内腔に開口する新生栄養血管の開口部と考えられた.

キーワード
Neovascurization of pseudointima, fresh homologous vein graft, mural thrombus, endotherialization


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