[書誌情報] [全文PDF] (7949KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 81(12): 1505-1519, 1980


原著

外科領域における血小板特異蛋白β-thromboglobulinの研究

岐阜大学 医学部第1外科(指導:稲田潔教授)

千田 晴之

(昭和55年3月1日受付)

I.内容要旨
研究目的:血小板特異蛋白β-thromboglobulin(以下β-TG と略す)の血漿中濃度がin vivoにおける血小板放出反応を反映することに注目し,各種外科的疾患の手術前後に血漿β-TGを継続的に測定し,血栓症,血管病変における血漿β-TG の診断的意義を検討するとともに手術後の血漿β-TGの変動を明らかにし,血小板の動向について検索した. また一部症例については血小板凝集能を同時に測定し両者の関連性を検討した. 結果:1) 血漿β-TGは急性期の血栓塞栓症,血管病変において高値を示すことが多い. 健常者群26.1±6.9ng/mlに比し有意の高値(p<0.05)を示したのは急性動脈閉塞症88.3±46.7ng/ml,静脈血栓症59.8±20.3ng/ml. Buerger病39.2±15.9ng/ml,閉塞性動脈硬化症35.1±14.2ng/ml,後天性心疾患38.2±16.4ng/mlの5群であった. 2) 血漿β-TGは手術時一過性に上昇するが術後24時間で正常化する.一般手術では術前38.6±28.1ng/m,術後101.9±76.6ng/ml,体外循環使用例では術前33.7±14.6ng/ml,体外循環終了時2019.5±881.6ng/ml. 3) 術中・術後の血漿β-TG上昇の要因として,手術侵襲,輸血,血栓症,急性腎不全,体外循環,代用血管移植,人工弁置換,播種性血管内凝固症候群があげられる.4) 血小板凝集能と血漿β-TGは相関しない(ADP凝集r= -0.123,collagen凝集r=-0.112,epinephrine凝集r=-0.084)が,血漿β-TG上昇時は消耗性の血小板機能低下が起ることが多い.5) 術後は一般的に消耗性の血小板機能低下が起り, 回復には数日から1週間を要す. 6) 血漿β-TGと血小板凝集能の継続測定によりin vivoにおける血小板の動向がより的確に把握できる.

キーワード
β-thromboglobulin, 血小板, 血栓症, 放出反応, 血小板凝集能


次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。