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日外会誌. 81(11): 1412-1422, 1980


原著

人工血液使用による体外循環の研究

福島県立医科大学 第1外科教室(主任:本多憲児教授)

奥山 孝

(昭和55年2月29日受付)

I.内容要旨
無血体外循環の安全性を向上させ且つ適応拡大をはるかるためには酸素運搬能を有する溶液,人工血液が必要である.著者は人工血液Fluosol-DA(FDA)が体外循環に応用可能か否かを検討するためホルスタイン仔牛5 頭(生後2~3 カ月,体重60~100kg) を用いFDA による体外循環を行い興味ある知見を得た.
体外循環は右総頚動脈より送血カニューレ,右外頚静脈より脱血カニューレを挿入し, ローラーポンプを用い,気泡型人工肺を使用した.静脈カニューレより循環血液量の70~80%を目標とし脱血,自家血はFDA による体外循環終了後経静脈点滴にて還元した.潅流量は60ml/kg/min,酸素流量は潅流量の3倍とした.
1) 自家血脱血は循環血液量の57.8~86.7%を4 ~ 8 分かけて行つた.
2) 体外循環中の最低Hct値は4~12%,Fct値は3~6% であつた.
3) Fct値は体外循環後2~4日にて血中より消失し測定不能となつた.
4) 体外循環よりの離脱はスムースであり, 5頭中3頭は3~5カ月経過した現在何らの合併症なく元気に発育している.他の2頭は体外循環後19時間に溶血,ヘモグロビン尿を来し死亡した.
5) 溶血, ヘモグロビン尿を来した例では脱血後自家血をシリコン加工しなかつた瓶に保存したことおよびFDAの体内とり込み量が12.5g/kg以上と生存例に比し多量であつたこと等が問題と考えられた.
6) 体外循環中のPaO2 は289~449mmHg と高値を維持し,PvO2 は45~298mmHg とばらついた.
7) PCO2は変動が少く,ほぼ一定値を示した.
8) 体外循環中の滲透圧,電解質の推移は正常範囲内であつた.
9) 以上よりFDAは体外循環の充填液として使用しうる可能性があるものと考えられた.

キーワード
体外循環, 人工血液

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