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日外会誌. 81(10): 1371-1379, 1980


原著

十二指腸狭窄を伴なった輪状膵の1例

*) 川口工業総合病院 外科
**) 東京医科歯科大学 第2外科

大島 昌*) , 中原 秀樹*) , 長島 道夫**) , 川滿 富裕**) , 具 栄作**)

(昭和54年11月2日受付)

I.内容要旨
著者らは十二指腸狭窄の診断で開腹して,開腹所見から輪状膵と診断,十二指腸空腸吻合術と選択的近位胃迷走神経切離術+幽門形成術(Holle法)を施行して術後経過の良好な症例を経験したので報告した.併せて1922~1979年の間に本邦で発表された成人輪状膵48例について文献的考案を加えた. 症例, 1 9歳,男性, 3 週間前からむねやけ,呕吐,体重減少が出現し次第に増悪したので来院した.レ線検査で十二指腸下行部の狭窄と狭窄部の内側への牽引,粘膜ひだの不鮮明化などの所見を認めた. F-S所見では下行部の全周に互るリング状の膨隆を認めた.膨隆部の生検組織検査は正常十二指腸粘膜であつた.胃液検査は過酸であつた.十二指腸狭窄の診断で開腹すると,幽門輪から5cm肛門側の十二指腸下行部は幅3cm,厚さ5mmの帯状の膵組織で締めつけられていた.狭窄部は小指を挿入することが出来なかつた.帯状の膵の両端は膵頭部に連なつていたが, 前壁中央では幅が狭くなり, 浮腫状で一部に小嚢胞を認めた. 手術所見から輪状膵と診断して狭窄部口側の十二指腸とTreitz靱帯から肛側10cm の空腸を後結腸法で順蠕動, 側側に吻合した.吻合部潰瘍を予防するために選近胃迷切と幽成術(Holle法)を付加した.術後2年を経過した現在,愁訴は全くなく, Visick grading I,減酸率も80%以上であつた.本邦で発表された成人輪状膵48例のうち手術方法の記載のある40例では,胃切除術がもつとも多く次がby-pass手術,直達手術の順であつた.この症例の様に十二指腸狭窄が高度な場合に胃切BII法を行うと十二指腸断端の縫合不全の危険が予想されるのでby-pass手術を選んだ.by-pass手術の中では十二指腸空腸吻合術が, blind loop の形成が避けられてdrainageが完全であると考えて施行した.by-pass手術では吻合部潰瘍の予防のために減酸手術が必要である. 減酸手術としては選近胃迷切+幽成術が理論的であると考え施行したが,現在まで報告されていなかつた.

キーワード
輪状膵, 十二指腸狭窄, 選近胃迷切+幽成

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