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日外会誌. 81(10): 1353-1364, 1980


原著

超音波断層法による膵疾患診断に関する研究
-特に膵の同定と膵癌診断の臨床的研究-

埼玉医科大学 第1外科(指導教官:尾本良三教授)
順天道大学 医学部超音波医学研究センター(指導教官:和賀井敏夫教授)

小林 正幸

(昭和55年2月14日受付)

I.内容要旨
最近,膵癌は増加傾向にあり,早期診断の必要性から種々の検査法が利用されている.
診断アプローチの第一としては簡単に施行出来る検査法が採用される必要がある.
超音波断層法は軟部組織の映像化が極めて良好で,簡単に施行出来,今日臨床各分野で広く利用されている検査法である.超音波断層法の膵癌診断に対する有用性を検討する目的で,剖検による摘出膵の水槽内実験と,人間ドック受診者における正常膵の超音波断層像並びに確定診断のついた膵癌52例の超音波断層像を検討し,次の通りの結論を得た.
1) 摘出膵の超音波断層像では,膵は周囲組織と区別され内部の微細構造までも明瞭に描写された.その際,上腸間膜動脈が膵同定のため重要な指標となることが示唆された.
2) 正常膵の同定には膵周囲脈管,なかでも腹部大動脈,下大静脈,門脈,上腸間膜動・静脈,脾動・静脈が非常に良い指標となることが判明した. これら血管系の助けから人間ドック受診者1054名中762名(約72.3%)に正常膵の同定が可能であつた.
3) 確定診断のついた膵癌52例の超音波断層像から,膵癌のエコーパターン上の特徴として, (i)膵限局性腫大, (ii)辺縁の不整像, (iii)内部エコーの不均一性, (iv)胆縦腫大, (v)膵周辺脈管走行の異常の5つが最も重要なものと認められた. これらを超音波断層法による膵癌診断の判定基準として,膵癌52例を検討すると45例(約86.5%)が膵癌と診断された.
4) 高速スキャン法は,膵周辺脈管走行異常の描写が優れており,膵癌診断のためには現段階では有力な手段と考えられた.
以上より,超音波断層法は膵癌診断の有力な方法であり,又,非侵襲性であるという特徴からもスクリーニング検査法としても,極めて有効であることが認められた.

キーワード
膵癌, 超音波断層法, グレースケール, 高速スキャン, スクリーニング検査

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