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日外会誌. 81(10): 1332-1341, 1980


原著

膵全摘犬における膵組織小片自家移植の実験的研究
-とくに組織小片量の差による効果について-

聖マリアンナ医科大学 第1外科(主任:渡辺弘教授)

田村 仁信

(昭和55年1月9日受付)

I.内容要旨
ランゲルハンス島分離の煩雑さを解消した膵組織小片移植により糖尿病状態の改善が報告されている.これまで移植単離ランゲルハンス島数と糖代謝の関係についての報告はみられるが,移植膵組織小片量と糖代謝の関係についての検討はみあたらない.著者は膵全摘犬に自家移植した膵組織小片量の差による糖代謝への影響および組織小片の内分泌機能について検討した.
方法:雑種成犬38頭(10-15kg)を次の5群に分け膵組織小片の脾臓内自家移植を行なつた.(1)対照群(10頭),(2)膵臓全摘出非移植群(7頭),(3)膵臓100%移植群(5頭),(4)膵頭膵尾部移植群(10頭), (5)膵尾部移植群(6頭).移植後血糖値測定を行ない正常血糖値を示した犬に移植1力月後, 3カ月後にブドウ糖負荷試験とアルギニン負荷試験を行なつた.
結果:移植後正常血糖値を示したのは膵臓100%移植群と膵頭膵尾部移植群であった. 移植1力月後の糖負荷では両群とも耐糖能低下がみられ, K値,lnsulinogenic Indexも低値を示したが両群間では有意差はなかつた.アルギニン負荷では両群とも血漿グルカゴン値の低下を示した.移植後3カ月の長期生存をえた膵頭膵尾部移植群の糖負荷では移植1力月後と比較するとK値,Insulinogenic Indexはさらに低値を示した.しかしアルギニン負荷では移植1力月後よりも血漿グルカゴン値の増加が認められた.
以上から膵全摘犬の糖尿病状態改善のためには全膵臓の半分以上の膵組織小片が必要であった.しかし糖負荷およびアルギニン負荷では膵組織小片のα細胞,β細胞の反応低下が認められた.

キーワード
膵臓移植, 膵組織小片, ランゲルハンス島, コラゲナーゼ


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