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日外会誌. 81(7): 676-687, 1980


原著

直腸癌のリンパ節転移の特徴
-拡大郭清による摘出リンパ節の検討-

横浜市立大学 第2外科学教室(指導:土屋周二教授)

大見 良裕

(昭和54年9月14日受付)

I.内容要旨
直腸進行癌で上方,側方リンパ節廓清を施行した根治手術例110例の摘出リンパ節を検索し,直腸癌のリンパ節転移を明らかにした. 110例の廓清リンパ節総数は3,718個で, 一例平均33.8個(上方25.6個,側方8.2個)を廓清した.転移陽性リンパ節総数は261個で, リンパ節転移度は7.0%(上方8.3%,側方3.0%)であった.リンパ節の部位としては,上方は251が13.7%と,側方は262が11.8%と転移度の高い部であった.リンパ節転移は60例 (54.5%) にみられたが,転移陽性のリンパ節数が1~3個と少ないものが31例と約半数を占めていた.リンパ節転移の方向は,上方だけ: 41例 (68.3%),上方+側方: 14例 (23.3%),上方+側方+下方: 3例 (5.2%),側方だけ:2例 (3.3%) となり,上方転移は96.7% (58/60) を占め,側方転移は31.7% (19/60) を占めていた.上方,側方転移ともに,腹膜反転部以下に位置する下部癌で57.7%, 20.5%と上部癌の40.6%, 9.4%に比べ多くみられた.上方転移陽性58例の上方転移部位は, 251だけ: 33例 (56.9%), 251 +252: 12例 (20.7%), 251+252+253: 3例 (5.2%), 252だけ:6例 (10.3%) であり, 253だけの転移や大動脈周囲リンパ節への転移はみられなかつた.側方転移陽性19例のうち18例は側方の1カ所のリンパ節群に転移が限定されていた.側方転移陽性のリンパ節数は1~4個, 一例平均1.4個と少なかつた.側方転移部位は, 262:6例, 272:5例, 282:3例, 293:3例,273: 2例, 280: 1例で,内腸骨動脈領域のリンパ節 (272, 282, 262) への転移が73.7% (14/19) を占めていた.上方または下方の転移を伴つていた17例の側方以外の転移部位としては, 251へだけの転移を生じていたものが7例 (41.2%) と最も多くみられた.側方転移部位の左右差と主病巣の壁在の関連性は一定の傾向がなかつた.下方 (ソケイリンパ節) 転移陽性3例はいずれも主病巣が歯状線に接し, 上方,側方転移を伴つていた.

キーワード
直腸癌, 直腸癌のリンパ節転移率, 直腸癌のリンパ節転移度


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