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書誌情報]
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日外会誌. 81(7): 666-675, 1980
原著
クローン病術後再発に関する検討
-とくに術中内視鏡の意義について-
I.内容要旨過去12年間に当科で手術された18例につき病理所見や手術所見の見直し,追跡調査などから術後経過や再発の原因並びに再発防止対策などにつき検討を加えた.対象は日本消化器病学会クローン病検討委員会の診断基準を満足する男14例,女4例である.初回手術時の病型は回腸型8例,回腸結腸型6例,結腸型2例,回盲部型1例,不明1例である.12例に縦走潰瘍形成が認められ, また10例で瘻孔が形成されていた.再発例を含め15例に広範切除を行い, 3例は姑息的手術で経過をみている.最初の手術が他施設でなされた5例を含めて初回手術からの再発は6例にみられ,再発までの期間は0.5~9年(平均4.7年)である.再発6例中5例に再切除を行つたが, 3例が1年半内に再々発している.再発例を検討すると切除腸管の長さが30~50cm程度のものが4例あり,また切除標本で病巣より切断端までが口側3~20cm,肛門側3~6cmであり,全例吻合部を中心に再発が認められ,前回手術での病巣の取り残しが否定できない.微細な粘膜病変は漿膜側からは識別できず,当科では昭和49年より術中内視鏡を併用し, 10例に可及的広範切除を行い再発防止を企図してきたが2例が再発した.なおby pass手術が行われた症例では病変が瘢痕化したものがあり,場合により有効な方法てあろう.現時点での術後経過は良好14例,再々発2例,手術困難2例である.
本症の術後再発に関しては様々な問題があるが,我々の症例からすると病巣の完全切除が第1である.症例により病変の拡がりは異なり,又腸管切離を病巣から十分離して行うためには漿膜面からの判別では不十分で, 術中内視鏡検査が大事である.手術時期については複雑な瘻孔形成や高度の病変では一期的手術が困難であつたり,病変残存による再発が多くなつてくるため,あまり手術適応に拘ることなく比較的早い時期での根治手術を行う方が望ましい.
キーワード
クローン病, 術中内視鏡, 縦走潰瘍
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