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日外会誌. 81(6): 562-574, 1980


原著

膵頭十二指腸領域癌の臨床病理学的研究
-予後を左右する因子の検討-

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

柯 鵬飛 , 松野 正紀 , 能登 陞 , 斉藤 洋一

(昭和54年9月12日受付)

I.内容要旨
1960年から1978年まで東北大学第1外科で取扱つた膵頭十二指腸領域癌204例中, 膵頭十二指腸切除術を施行した膵頭部癌26例,膵内胆管癌34例,乳頭部癌20例計80例の予後を左右する因子について,臨床像では切除例と非切除例に分けて比較検討し,病理組織学的には日本膵臓病研究会の膵癌取扱い規約によって組織標本を作製し,それぞれの組織型,組織内浸潤度,脈管および組織内深達度並びにリンパ節転移などについて検索した.とくにリンパ節転移については,廓清した全リンパ節をHilusを含む長軸方向の切片とさらにこれに平行な面2カ所計3つの切片標本で検索した.
結論:1) 5年生存率は膵頭部癌14.3%,膵内胆管癌17.4%,乳頭部癌38.5%であつた.2) 低分化型管状腺癌の平均生存月数は短かつた.3) 膵頭部癌, 膵内胆管癌ではINFγの平均生存月数がそれぞれ7.9, 17.4カ月と短かつた.4) 脈管侵襲および組織内進展の有無と平均生存月数は膵頭部癌ではv (+) 9.3, v(-) 30.7, ch(+) 17.7, ch(-) 35.8, du(+) 18.7, du(-) 44.5カ月,膵内胆管癌ではV (+) 18.7, v (-) 36.0, du(+) 26.1, du(-) 76.5, Pan(+) 16.2, Pan(-) 43.8カ月といずれも陽性例の平均生存月数が短かつた.5) 膵頭部癌, 膵内胆管癌ではsi の平均生存月数はそれぞれ9.2カ月と14.4カ月で,soの28.4カ月と44.7カ月に比較して有意に短かつた.6) リンパ節転移率は膵頭部癌83%,膵内胆管癌50%, 乳頭部癌43%.1症例平均検索リンパ節数はそれぞれ15, 14.4, 14.3コであつた.転移リンパ節の頻度の高い順は膵頭部癌では13a,13b,14a,14b,膵内胆管癌では13a,13b,17b,12,乳頭部癌では13b,14a,17b,13aであつた. 平均生存月数は膵頭部癌ではn(+) 18.4, n (-) 38.0,膵内胆管癌では n(+) 17.5, n (-) 40.7,乳頭部癌では n(+) 16.5,n (-) 77.9と いずれも転移例の平均生存月数が短かつた.とくにn(+)例では術後2年までの再発死亡例が多かつた.

キーワード
膵頭十二指腸切除術, 膵頭部癌, 膵内胆管癌, 乳頭部癌, リンパ節転移

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