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日外会誌. 81(6): 537-548, 1980


原著

エンドトキシン血症における糖代謝異常に関する研究
-特にラット肝灌流による実験的研究-

金沢大学 医学部外科学第2講座(主任:宮崎逸夫教授)

能登 啓文

(昭和54年9月12日受付)

I.内容要旨
エンドトキシン(LPS)血症時に生ずる糖代謝異常は病態を悪化させる重大な要素の1つとして注目されている.本研究ではラットを用いてin vivoおよび潅流肝でLPSを投与し,その肝内糖代謝中間体の含量の測定により,糖代謝異常の形態を更に詳細に検討した.
ラットLPS血症ではコントロール群に比較し, 4時間群で血糖値が73%に低下すると共にglycogenが65%, G6Pが62%に低下し,一方, FDPは231%, lactateは326%,L/P比は189%と増加が見られた.この傾向は8時間群で更に著明であった.
潅流肝においては,潅流液の組成によりバターンは異なり,解糖基質としてglucoseを添加した場合,LPS潅流群はコントロール潅流群に比べてPEP値に72%と低下が見られた.また糖新生基質としてのalanineを添加した場合には,同じくLPS潅流群はglycogenで50%, G6Pで88%, FOPで85%, PEPで92%とPEPより糖新生に向う中間体では減少し, alanine の糖代謝系への流入点であるpyruvateは161%と増加した. pyruvateがPEPへ転化する能率の推定値PEP/Pyr.比を比較すると, LPS潅流群は57%と低下が認められた.
単なる肝潅流不全による糖代謝障害と比較するために, LPSを用いずに低流量潅流を行つた肝を検討したところ, 一部glucose添加群のFDPでは135%と増加傾向を示したが, PEP/Pyr.比の低下は軽度でpyruvate より上位の糖新生系中間体は全般に低下していた. 一方, lactate では著明な増加(142~153%)があり, L/P 比の上昇(201~209% )も顕著であつた.
従つて, LPS血症での糖代謝障害は,糖新生の障害がその本質と考えられ, LPSは間接的に肝循環不全によるFDP,lactate の蓄積を生ずるとともに,直接的にもpyruvateからPEPへの転化を障害していることが示唆された.

キーワード
エンドトキシンショック, 肝内糖代謝中間体, 糖新生障害, ラット肝潅流

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