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日外会誌. 81(6): 505-510, 1980


原著

門脈圧亢進症に対する外科的治療前後の肺生理学的シャント率に関する臨床的研究

北里大学病院 外科

大島 行彦 , 鎗水 民生 , 根本 日普 , 阿曽 弘一

(昭和54年8月20日受付)

I.内容要旨
肝硬変症患者は, しばしばチアノーゼ,低酸素血症をみることが知られており,肺生理学的シャント率の増大が低酸素血症の一因をなすとされている.何故,肝硬変症患者で肺生理学的シャント率が高いのかを,下記の如き方法で検討した.食道静脈瘤を有する門脈圧充進症患者20名を対象とした.これらの患者に,東大第2外科法による経胸的食道離断術, 食道周囲血行遮断術, および経腹的脾臓摘出術,胃食道周囲血行遮断術を施行し,この前後の大気吸入時および100%酸素吸入時の血液ガス所見,肺生理学的シャント率,閉塞性肝静脈圧, ICG 15分停滞率を測定し, 以下の結果をえた. ① 門脈圧亢進症患者においては健常者に比較し, 100%酸素吸入時の動脈血中の酸素分圧は低値を, 肺生理学的シャント率は高値を示したが,大気吸入時の毛細管血中の酸素分圧は有意の差を認めなかつた.炭酸ガス分圧は低値を示した.② 1の如き結果は,肝硬変症, 肝線維症両者にあらわれており, ICG 15分値と肺生理学的シャント率との相関係数は0.25であり,門脈圧亢進症患者全般にあらわれることがわかつた.しかし,閉塞性肝静脈庄と肺生理学的シャント率との間にも,相関関係は認めなかつた.③ 食道離断術後, 100%酸素吸入時の動脈血中の酸素分圧,肺生理学的シャント率は改善した.
肝硬変症患者にあらわれるといわれている肺生理学的シャント率の上昇は,門脈圧亢進症患者全般にあらわれること,これが食道離断術より改善することなどから,門脈ー肺静脈シャントなどの循環務態の変化が主因をしめ,これにClosing Volume の増大などが加わったものと考えられるが,ホルモンなど他の種々の要因も複雑に関与しているものと考えられる.

キーワード
門脈圧亢進症, 食道離断術, 肺生理学的シャント率, 門脈-肺静脈シャント, Closing Volume

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