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日外会誌. 81(5): 365-380, 1980


原著

「エンドトキシンショック発現に関与する免疫学的機序の研究」

東京大学 医学部第1外科学教室(指導:草間悟教授)

渡邊 千之

(昭和54年7月24日受付)

I.内容要旨
〔1〕重症惑染症及びショック患者86例を血中Et陽性32, 陰性54の各例に分けCH50を比較すると前者は37±3CH50/ml, と後者の45±2CH50/ml に対し有意の低値を示した.しかしこれらの,E. coli 4血清型Etに対するO-抗体価は特に高値を示すものは無く, またEt腸性,陰性各群間の差も見られなかつた.〔2〕PTCなど直接胆道造影施行患者15例中11例が検査後血中エンドトキシン(Et)陽性となった.その11例中7例は胆汁中から細菌が培養検出され, うち,感染期間の長い5例に血清補体価(CH50) の著しい低下と共に激しいショック症状が見られた.〔3〕抗Et血清(ウサギ)は, in vitro でEt と混和し, incübateすると, 1) 錯酸鉛処理ラットに対する致死活性をO-特異的に中和し, 2) リムルスライセートのゲル化をO-特異的に抑制した.但し2) の作用はクロロフォルム法で排除された.〔4〕ウサギに致死量のEtを静注すると一過性の急性な血圧下降(初期血圧下降)の後,一旦回復し,再び徐々に下降して(後期血圧下降)死に至るのが定型的な経過であるが, 1) 特に初期下降はCH50値の低下と有意の相関があり,予じめ感作したウサギでは致死景の1/10のEt注射により著しいCH50低下と激しい血圧下降を示した. 2) 対照ウサギのEt 注射後24時間死亡率は15/16であるが, Hydrocortisone 75mg/kg 前投与群では2/10に, Indomethacin 10mg/kg前投与群は6/14と2剤共に有意の救命効果を示した.また前群では初期変化(血圧及びCH50の低下)は対照群と有意の差が無く,後群ては初期血圧下降が14例中1例を除いて完全に抑制されたが, CH50値低下は対照群と有意の差が無かつた.
以上からEtのショック惹起,致死作用の発現には,抗原抗体反応を介する,及び介さない補体活性化が一つの菫要な機序として働いていることは明らかであるが,抗体,補体という体液性防禦機構の木来の機能に随伴した過敏反応は,本機序の一面であつて, Etには更に多彩な生物活性があり,これらの綜合的な結果が致死作用である, と推論された.

キーワード
Endotoxic shock, Complement, O-antibody, Limulus lysate gelation test, 直接胆道造影


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