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日外会誌. 81(3): 242-246, 1980


原著

胃切除後のグルカゴン分泌動態に関する研究

兵庫医科大学 第2外科
*) 神戸大学 第3内科
**) 京都大学 第2内科

琴浦 義尚 , 山村 武平 , 高橋 徳 , 橋本 直樹 , 吉矢 健一 , 三浦 順郎 , 石川 羊男 , 伊藤 信義 , 千葉 勉*) , 森 幸三郎*) , 田港 朝彦*) , 清野 裕**)

(昭和54年7月7日受付)

I.内容要旨
胃全摘症例の術前後で,静脈内ブドウ糖負荷試験と経口的ブドウ糖負荷試験を施行し,経時的に血糖,インスリン,グルカゴンを測定して,胃全摘症例の耐糖能について検討した.
静脈内ブドウ糖負荷試験:血糖消失率K値ならびにインスリン反応は,術前にくらべ術後で有意な低下を示した.また,30K反応性グルカゴンは術前後とも抑制され,両者間に有意差は認めなかつた.
経口的ブドウ糖負荷試験:インスリン反応は,静脈内ブドウ糖負荷試験の場合とは逆に,術前にくらベ術後であきらかな高反応が認められた.一方,術前正常型を示した血糖曲線は,術後糖尿病型を呈し,術後のインスリン高反応にかかわらず耐糖能の低下が認められた.同時に測定した30K反応性グルカゴンは術前抑制反応を呈したが,術後これとは逆にあきらかな過剰反応を呈した.また, total GLI は術前軽度の上昇反応を示し,胃全摘後は著明な増加反応を呈した.
以上の結果より,胃全摘後は術前にくらべて,静脈内ブドウ糖負荷試験時,経口的ブドウ糖負荷試験時ともに,耐糖能の低下することがあきらかとなつた.この際, 血糖上昇物質の主因と想定される30K反応性グルカゴンは,静脈内ブドウ糖負荷試験時,術前後とも抑制されたのにくらべ,経口的ブドウ糖負荷試験時では,術後にあきらかな過剰反応が認められた.このことはすなわち,術後の経口的ブドウ糖負荷試験時に増量する30K反応性グルカゴンが, 消化管を介して分泌されていることを示しており,また,同時に増加してくるtotal GLI とともに, これらグルカゴンが, 胃全摘術後の経口的ブドウ糖負荷試験時の耐糖能低下に関与する可能性が示唆された.

キーワード
胃切除, 糖代謝異常, 経口的ブドウ糖負荷試験, 静脈内ブドウ糖負荷試験, グルカゴン

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