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日外会誌. 81(3): 236-241, 1980


原著

胸腹部大動脈瘤の1治験例および本邦手術例の検討

1) 国立善通寺病院 外科
2) 徳島大学 第2外科

矢毛石 陽三1) , 吉田 冲1) , 湯浅 亮一1) , 浜口 伸正1) , 佐々木 真人1) , 横田 博1) , 吉沢 潔1) , 加藤 逸夫2)

(昭和54年7月16日受付)

I.内容要旨
腹腔動脈,上腸間膜動脈,腎動脈などの腹部重要臓器への動脈起始部を含む上腹部大動脈瘤は,ほとんどの場合,横隔膜を越えて胸部下行大動脈にも及んでいるので,胸腹部大動脈瘤として取扱われている.発生頻度が少なく,手術が技術的に困難なことなどのため,欧米でも手術成功例の報告は少なく,本邦においては,手術成功例13例, 1カ月以内死亡の手術死例を含めると18例の発表をみるにすぎないようである.本邦例の手術手技としては, 全例がDeBakey術式に準じて行われているのに対し, 私どもは大動脈瘤の上下を遮断し,大動脈瘤を縦切開し,管腔内に血行再建を行つて順調な経過をとつた症例を経験したので,術式の詳細, 術前後を通じての諸管理, 本邦例の集計などを検討報告する. 本症に対しDeBakey 術式でなく,管腔内血行再建を行った報告は,本邦では私どもの症例が最初のものと思われる.
症例は54歳の家婦.主訴は左腰背部痛.胸部X線像で下行大動脈が心陰影の左方に著しく突出し,左上腹部に著明な拍動性腫瘤を触れ,大動脈造影で下行大動脈全域から腹部大動脈の腎動脈分岐部直上までの大きな胸腹部大動脈瘤が造影された. 1978年10月25日,低体温などの補助手段を用いずに手術. Crawford Type Il術式に準じて管腔内に血行再建. 術後は極めて良好で,胃腸,肝,腎,下肢に異常所見なく,大動脈造影でも消化器, 腎への血行良好. なお手術時間は6時間55分, 大動脈遮断時間40分, 術中出血量4,700ml,術前後を通じての輸血量は4,800ml.
術後1年以上を経過したが現在著変なく,家事および軽作業に従事中である.

キーワード
胸腹部大動脈瘤, 管腔内人工血管移植, 腹部主要臓器血行再建

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