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日外会誌. 81(3): 226-235, 1980


原著

静脈移植の研究
-酵素処理同種,異種動脈の応用-

千葉大学 第1外科(指導:伊藤健次郎教授)

永岡 喜久夫

(昭和54年9月11日受付)

I.内容要旨
目的:静脈移植における信頼できる代用血管はいまだ開発されていない.そこでficinおよびglutaraldehyde で処理した酵素処理生物血管の静脈移植への応用を試みた.
実験方法: (1) 移植実験においては同種,異種動脈を酵素処理した4群のクラフトを作製し,雑種成犬32頭の下大静脈に移植し, 各群1年以上の経過観察をおこない, i)開存性, ii)長期の組織反応, iii) 内皮細胞, iv)酵素処理血管の同種, 異種の差の有無, v)酵素処理時間の開存性及び組織反応に及ぼす影響,等について検討した. (2) 免疫学的検討においては,移植犬に対して, i) Ouchterlony, ii) Ring Test, iii) Radio immunoelectrophoresisによるimmunoglobulin特にγ1aの検索,等をおこない体液性免疫の検討を加え, さらに移植犬のリンパ球の3H-Thymindine のとり込みによる特異的感作リンパ 球の検索をもつて細胞性免疫の検討をおこなった.
成績: (1) 開存性,組織反応とも同種,異種血管の間に有意差は認めない. (2) Ficin処理時間は開存性および石灰化変性の問題に重大な影響を示した. (3) 牛の頚動脈を1% ficinで2時間30分処理し,1.5% glutaraldehyde でナメした代用血管は開存性も,組織学的にも良好な結果を示した. (4) 酵素処理血管移植犬の免疫学的検討では, Radio immunoelectrophoresisにおいてy-G およびY1aがごくわずかに検出されたが,細胞性免疫においては特異的な移植血管によるリンパ球の感作は認められなかつた.
以上より酵素処理血管の臨床応用は可能と考えられる.

キーワード
静脈移植, 酵素処理血管, 移植血管の免疫, 代用血管


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