[書誌情報] [全文PDF] (4047KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 81(2): 147-155, 1980


原著

Intestinal Behçet病術後における血液凝固学的検討

福島県立医科大学 第2外科教室(主任教授:遠藤辰一郎教授)

川口 吉洋

(昭和54年6月4日受付)

I.内容要旨
腸の非特異性潰瘍の中で術後再発頻度が高いIntestinal Behçet病(以降本症)について術後再発を繰返す群(以降活動群)と,術後再発を見ない群(以降寛解群)とを比較しながら血液凝固学的背景より検討した.
結果を本症全体からみると,その血液凝固学的背景はhypercoagulabilitic & decreased fibrinolytic stateにあることが解つた. しかし,さらに詳細に検討すると, まず凝固面では,活動群と寛解群とでは生理的凝固抑制物質であるAnti-thrombin IIIの態度に差異が認められた.すなわち,活動群では著明に減少しておりhypercoagulabilitic stateを生理的立場からの抑制が出来ず, むしろ助長させる結果を想像させた.一方,寛解群では正常かむしろ増加をしていることから,この群では前述の状態を生理的抑制効果機序を想定させた. また, この事は本症病態の進行度を反映する1つのparameter と言えるのではないかと考える.
一方,線溶系を見るとFDPが活動群に比べ有意な低値を示しPlasmin抑制病態が考慮された.そこで生理的Plasmin阻害物質についてみると,α1-Antitripsinが活動群に高く寛解群では正常化している事ゃα2-Macroglobulinが寛解群において活動群よりも上昇している事などから, 本症における外科的侵襲が寛解群において何らかの線溶面での作用効果へと導いているのではないかと考えられた.
Plasminogenは,活動群に低下し,またEuglobulin lysis timeが活動群でも延長していることを合わせると,活動群においてはPlasminogenの生成不全をも想像させる結果を得た.
以上,これら活動群および寛解群における動向は,潰瘍病変腸管の切除という外科的療法が臨床的のみならず凝血学的にも好転をもたらしたことを明示し,病巣摘除の外科的意義を見るものと思う.

キーワード
Intestinal Behçet病, 術後再発, 凝固線溶系, AntithrombinⅢ, Plasminogen


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。