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日外会誌. 124(3): 291, 2023

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手術のtips and pitfalls

「腹腔鏡下結腸切除術における体腔内吻合のtips and pitfalls」によせて

東邦大学医療センター大森病院消化器センター 外科

金子 奉暁



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1991年Jacobs ら1)に報告されて以来,腹腔鏡下結腸切除術は,その低侵襲性から広く普及し,現在ではゴールドスタンダードとなっています.腹腔鏡下結腸切除術における腸管吻合は,腹壁に作成した小切開創から腸管を引き出して,体腔外で行うことが一般的です.しかし,高度な肥満や癒着症例では,体腔外への腸管の十分な引き出しが難しく,広い剥離操作や大きい腹壁切開が必要となります.その結果,腹腔鏡で得られた低侵襲性によるメリットは少なくなります.また,引き出した際の腸間膜にかかる緊張で血管を損傷し,大量の出血に肝を冷やすこともあります.
体腔内吻合は吻合過程をすべて体腔内で行う方法であり,腸管受動範囲や腹壁切開が縮小可能なことから,近年注目されている方法です.吻合時に体外に腸管を引き出す必要がないため,特に臨床で苦労する肥満や癒着症例に有効とされ,習得しておきたい吻合手技の一つです.一方で,自由度の低い体腔内での吻合には,腸管の取り扱い,自動縫合器の操作,縫合手技などに様々な要点があり,独特の難しさが存在します.また,吻合過程での腸内細菌や腫瘍細胞の腹腔内への暴露が懸念されており,それらを最小限にする対策も必要です.
そこで,今回の「手術のtips and pitfalls」は,腹腔鏡下結腸切除術における体腔内吻合とさせて頂きました.
吻合法には機能的端々吻合法・Overlap法・デルタ吻合法などがありますが,その中でも代表的な吻合法であるOverlap法を久留米大学の藤田文彦先生に,デルタ吻合法を国立がん研究センター中央病院の塚本俊輔先生に,豊富な経験に基づいて丁寧に解説して頂きました.本企画が会員の先生方の臨床に役立つ情報になれば幸いです.

 
利益相反:なし

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文献
1) Jacobs M, Verdeja JC, Goldstein HS: Minimally invasive colon resection (laparoscopic colectomy). Surg Laparosc Endosc, 1: 144-150, 1991.

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