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日外会誌. 124(2): 156, 2023

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特集

糖代謝異常と外科医療

1.特集によせて

山梨大学 第一外科

市川 大輔



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近年の生活習慣や社会環境の変化に伴い,わが国でも糖尿病患者が急速に増加している.年代別内訳では高齢患者の割合が高く,糖尿病による様々な全身合併症を伴っていることも多い.大規模コホート研究では糖尿病患者の癌発生が増加することが明らかとなり,社会の高齢化も合わさって糖尿病併存の癌患者を手術する機会も増えた.以前より,侵襲が加わった後の外科的糖尿病は良く知られており,ある意味,われわれ外科医には馴染みの深い疾患であるが,糖尿病患者における外科手術リスクが高いことも知られており,術前・術後の適切な血糖管理は極めて重要である.近年では,持続血糖モニタリングシステムの開発による周術期の詳細な血糖値の推移が把握できるようになり,人工膵臓の開発による精緻な血糖管理も可能になった.また,膵管内乳頭粘液腺腫瘍の発見の増加など膵全摘を行う機会も増加し,今後,益々周術期ならびに術後の厳密な血糖管理が重要になると思われる.
一方で,これまで内科的治療に頼ってきた糖尿病について,合併する肥満や随伴症の程度により,減量・代謝改善手術を行う症例が本邦でも増えている.重症例や併存疾患の程度によって,移植医療も行われており,低侵襲な膵島移植も治療オプションとして確立されつつあるようである.近年では,肥満を伴う癌患者に対して,“Oncometabolic surgery”の考えから,癌に対する手術時に,代謝的側面も考え併せた再建法を検討することの重要性も報告されている.糖代謝異常症における外科医療の考え方が新たな局面を迎えていると思われ,本特集が会員の皆様の診療に役立つことを願っている.

 
利益相反:なし

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