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日外会誌. 124(1): 93-95, 2023

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(7)「外科発展の礎―外科志望者増加のための取り組み」
4.当院におけるロボット支援手術トレーニングを基軸とした外科志望者増加の取り組み

名古屋市立大学 消化器外科

髙橋 広城 , 加藤 瑛 , 原田 真之資 , 渡部 かをり , 柳田 剛 , 牛込 創 , 鈴木 卓弥 , 志賀 一慶 , 小川 了 , 松尾 洋一 , 三井 章 , 木村 昌弘 , 瀧口 修司

(2022年4月16日受付)



キーワード
ロボット支援手術, 外科医不足, 手術トレーニング, 教育

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I.はじめに
近年,外科を志望する学生は減少傾向にあり,その克服が急務となっている.また,外科領域においてロボット支援手術が急激に増加しているが,その教育システムが普及のスピードに追い付いていないのが現状である.われわれはこの二つの難問を解決するために,当院独自のロボット支援手術トレーニングシステム(Nagoya City University Robotic Surgery Education System: NRSES)を構築した.

II.目的
当院で行っている,NRSESを基軸とした学生対象のロボット支援手術トレーニングについて提示し,今後の外科志望者増加への寄与について検討する.

III.方法
図1に当院で行っているNRSESを基軸としたトレーニングの流れを示す.まずClinical Clerkship (CC)実習開始2週間前に,ロボット支援手術についての紹介,当院でのロボット支援手術の現状などについてメールで紹介する.その際にIntuitive社のオンラインでのcertificate取得を促す.実習ではすべての学生に縫合結紮のトレーニングや腹腔鏡のシミュレーターを用いたトレーニングを行うが,certificate取得者はさらにda Vinciのシミュレーターを用いたトレーニングを行った上で,実際のロボット支援手術に手洗いをして参加する.実習終了後にはcertificate取得者にアンケートを送付し,ロボット支援手術の理解度,外科への興味の変化などを聴取した.

図01

IV.結果
2021年4月から2021年12月の期間にCC実習を行った5年生64名に上記トレーニングを案内した.その結果24名(37%)の学生が実習開始までにcertificateを取得し,シミュレーターを用いたトレーニングを行い,ロボット支援手術に手洗いをして参加をした.
実習終了後に回収したアンケートの結果,ほとんどの学生がロボット支援手術の特徴,メリットやデメリット,さらに操作方法などの基礎を理解することができていた(図2).さらに,9割近くの学生が外科に対する興味が増しており,8割以上の学生が将来ロボット支援手術を行いたいと答えた(図3).また,今後どの程度の手術がロボット支援手術になると思うか確認をしたところ,30~60%と答えた学生と60~90%と答えた学生がおよそ40%ずつであった.10%以下,もしくは90%以上と答えた学生は認めなかった.

図02図03

V.考察
学生の学習効果を考慮した際に,アクティブラーニングに重点を置いたトレーニングの重要性が報告されており1),われわれもこの点に着目したトレーニングコースを作成した.まず実習前にオンラインで実際のロボット支援手術を開始するために必要なcertificateを取得してもらうこととした.これまで学生実習においてロボット支援手術のcertificate取得を行っている施設はないと思われ,本邦でも初の試みと考える.実際,多くの学生がロボット支援手術について非常によく理解をしており,講義型の実習よりも自分でcertificateを取得するという行為そのものが,教育効果を高めていると思われる.手術への手洗い参加時には,単なる見学ではなく鉗子の交換などを含めてより積極的に参加をしていただくように努めている.さらに,シミュレータートレーニングでは実際の手術で用いるサージョンコンソールでのトレーニングとなり,将来のイメージがより描けるものと思われる.本トレーニングによるアクティブラーニングの結果として,多くの学生がロボット支援手術のみならず外科そのものへの興味が非常に増したと答えている.この新たな取り組みが実際に外科医不足の解消につながるかはまだ明らかではないが,今後も継続して行いつつ将来の動向を見極めていく必要がある.
上記以外にも,ロボット支援手術が外科医不足に役立つことがいくつかある.ロボット支援手術は術者および助手を含めてすべての医師が座った状況で手術を行うことができる.このことは「外科医はきつい仕事」と考える女子学生へのアピールになると思われる.また,ロボット手術は基本的に2人で行うことができる.このことは現在進行形で人員不足にある病院において,今すぐ外科医不足に役立つメリットと考えられる.

VI.おわりに
ロボット支援手術という最先端技術にアクティブラーニングとして学生の段階から接することは,将来への期待・モチベーションの高揚などを介して外科医増加に寄与することが期待される.また,このような取り組みは今後さらに発展をしていくロボット支援手術の安全な普及に大いに貢献するものと思われる.Limitationとして,本発表でのアンケート結果はロボット支援手術を学びたいと希望した学生に限定して行った結果である事が挙げられる.

 
利益相反:なし

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文献
1) 溝上 慎一:アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換.東信堂,東京,pp3-23, 2014.

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