[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (532KB) [全文PDFのみ会員限定]

日外会誌. 123(6): 510, 2022

項目選択

会員へのメッセージ

日本外科学会教育委員会の目指すもの

日本外科学会教育委員長,順天堂大学医学部乳腺腫瘍学講座 

齊藤 光江



<< 前の論文へ次の論文へ >>

I.はじめに
教育委員として数年の経験を経て,2021年委員長を拝命し,あらためて教育の意味,特に外科医を育成するということの意味を考えさせられている.手始めに,各領域の委員の先生方に意見聴取をする機会を設けた.極めて貴重なご意見を賜り,大変有意義であった.その結果提案させていただきたいことを以下に示す.

II.提案
① 初学者を対象に,外科専攻医プログラムの必須項目を中心に,基本的手技の超短時間動画を作成する.コンテンツや配信方法,作成については,若手ワーキンググループを結成し,提案してもらう.聴講のハードルを低め,働き方改革の中にあって教育も効率化が求められることにも対応できると考えている.
② 指導者を対象に,基本講座(リーダーシップ,チームビルディング,アンガーマネジメント,diversity inclusion & equity,医療倫理,研究倫理,医療安全など)を受ける機会を設ける.
③ サブスペシャルティの専門医が設けられていない領域,横断的なサブジェクト,働き方改革との折り合いがつきにくい部分,外科に隣接する領域(外傷外科,救急(急性腹症・頸部窒息含む),代謝栄養・術前術後管理(小児科,内分泌外科を含む),腫瘍学,感染症学など)については,従来通りの教育セミナーで扱っていく.
④ 手術件数を要求される現行の専門医制度プログラムであるが,診療科によっては専門性が高いため選択制でもよいか否かを議論していきたい.外傷外科は救急等で実技を学ぶ機会を設ける.ここにおいても若手の意見を大いに取り入れたい.専門医制度で取得する単位の見直しにも繋がる可能性があると考えている.
⑤ タスクシフトを推進する際には,タスクを担ってくれる他職種の教育も学会で担うことが求められるであろう.

III.おわりに
2020年から2021年は,COVID-19感染症流行下にあって,世の中が大きく様変わりした.日本外科学会も森前理事長のご英断で,初めて女性を理事に加えるという大改革が行われた.多くの殿方にとり,女性が意思決定組織に加わることは,不安であったかもしれない.いまや性は二つや三つに分類されるものではなく,グラデーションを持ったスペクトラムであるという認識が求められつつあるが,これまで学会における主要な意思決定の場で発言する機会の少なかった女性の一人として,発言の機会を与えて頂いたことを大変有難く思っている.後輩に閉ざされていた道が開通したという意味においてである.さて,そういった私達の長所は,発言の機会が与えられていないあらゆる立場の人々から,これまで耳にすることが無かった声を導き出すことに意欲と理解があることではないかと思っている.若い世代,タスクシフトを担う他職種,発言の機会が少なかった地域,アカデミア以外の施設の皆様から性別を問わず,貴重で重要な意見を聴取し,対話し,外科医育成に大いなるヒントを見出してまいろうと思う.ご理解とご協力を賜れば幸いである.

 
利益相反:なし

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。