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日外会誌. 123(5): 456-458, 2022

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(1)「COVID-19は外科医療にどのような影響を及ぼしたか―現状と展望―」
3.新型コロナウイルス感染症の術前スクリーニング7,000症例と緊急手術から得た教訓と課題

1) 名古屋市立大学 消化器外科
2) 名古屋市立大学 感染制御室

柳田 剛1)2) , 渡部 かをり1) , 鈴木 卓弥1) , 牛込 創1) , 志賀 一慶1) , 小川 了1) , 松尾 洋一1) , 高橋 広城1) , 瀧口 修司1)

(2022年4月14日受付)



キーワード
COVID-19, 術前スクリーニング, 周術期管理

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I.はじめに
中国武漢に端を発する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応は今日の至上命題である.COVID-19患者の治療のみならず,入院・治療前のscreeningは大きな課題であり,適切な対応が求められる.周術期COVID-19発症は20%を超える死亡率が報告され(図11),手術・治療前screeningの重要性は非常に高いと考えられる.当院のscreeningシステム構築・Digital化,また実際COVID-19対応での緊急手術時の困難・問題を報告する.

図01

II.対象
中央手術部全身麻酔による予定手術症例,および内視鏡センターでEMR/ESD予定症例に対し,2020年6月〜問診+COVID-19抗体検査によるscreeningを開始した.問診内容各項目まで全てDigital data base化した.2020年9月〜問診+PCR検査(LAMP法PCR)へ変更し,12月末〜緊急手術・内視鏡治療に対し,簡易問診+PCR検査(NEAR法PCR)+胸部CT検査施行方針を追加した.2021年2月〜High Risk局所麻酔手術もscreening対象とした.上記期間中,COVID-19対策下での緊急手術を3症例経験した.

III.結果
2020年6月〜2022年3月末で7,646症例のscreeningを施行,問診で6.4% Riskあり(発熱4.1%,呼吸器症状10.7%など).1例濃厚接触で,1例PCR検査陽性で手術回避となった.しかし2022年4月に入り,4名のPCR陽性患者がscreeningで手術延期となった.4名中2名が無症状,2名が軽微な咽頭痛をPCR検査前夜または当日に呈したのみであった.2021年夏のDelta株までは,喀痰増加等の症状でPCR検査前に除外することが可能であったが,2022年1月からは当院でもOmicron株へ推移し(図2),術前Screeningを受ける患者ではほとんど無症状となっている(図3).
緊急手術時は,陰圧手術室・動線確保の問題,Yellow zoneをまたぐ追加物品授受等で手術時間延長(表1)と安全性が課題として浮上した.
幸いなことに2022年4月末現在まで定期・緊急手術・治療対象患者で,術後COVID-19陽性患者発生は認めていない.

図02図03表01

IV.考察
問診・PCR検査・画像診断いずれも単独では不完全であり,総合的判断が必要となる.Screening問診は,Omicron株流行以前は入院3日(営業日)を基本としていた.しかし,Omicron株では無症状患者が多数を占め,また有症状患者の症状出現も感染から潜伏期間が短い.それを踏まえて,当院ではScreening検査を原則入院前日へと変更した.問診内容やScreening検査も運用に合わせて適宜変更を加えてきた.COVID-19の流行状況,流行株の特徴の推移を踏まえて柔軟に対応していくことが大切と考えられる.また,医療従事者への十分な情報提供,患者教育,および些細な体調変化でも患者から連絡いただけるようなコミュニケーションが肝要と思われる.
またCOVID-19感染症患者の緊急手術の経験から,Aerosol/Airborne感染症患者に対する緊急手術の病院構造・人員配置等の制約・限界が明らかになり,施設毎に適切な体制を構築することが重要と考える.

V.おわりに
各地域・施設ごとのCOVID-19変異株の推移に合わせた適切なScreening検査の運用が必須と考えられる.
緊急手術症例に関しては,各施設ごとの事前シミュレーションが重要となる.
当院のCOVID-19術前スクリーニングシステムの構築, 運用に関して多大なるご協力をいただいた看護部, 検査科, 医事・事務課, および各診療科の先生方にこの場を借りて御礼申し上げます.

 
利益相反:なし

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文献
1) COVIDSurg Collaborative: Mortality and pulmonary complications in patients undergoing surgery with perioperative SARS-CoV-2 infection: an international cohort study. Lancet, 396 (10243): 27-38, 2020.

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