日外会誌. 123(5): 444-448, 2022
手術のtips and pitfalls
腹腔鏡下噴門側胃切除術におけるmodified side overlap with fundoplication by Yamashita (mSOFY)再建
日本赤十字社和歌山医療センターがんセンター 消化器外科 山下 好人 |
キーワード
腹腔鏡下噴門側胃切除, ロボット支援下噴門側胃切除, mSOFY, 食道残胃吻合
I.はじめに
近年,cStageⅠの胃癌に対しては多くの施設で腹腔鏡下手術が行われており,胃癌治療ガイドラインにおいても腹腔鏡下幽門側胃切除術(laparoscopic distal gastrectomy ; LDG)は強く推奨される術式となっている.一方,胃上部の早期胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術および腹腔鏡下噴門側胃切除術(laparoscopic proximal gastrectomy ; LPG)は長期成績のevidenceがないため,弱く推奨するにとどめられている.しかし,その安全性はJCOG1401試験で証明されており,多くの施設で施行されていると思われる.胃上部の早期胃癌ではリンパ節郭清の観点から胃全摘の必要はなく,噴門側胃切除術(PG)が標準術式となっている.術後の生活の質(QOL)においてPGで胃を残す意義は大きいと考えられるが,食道残胃吻合で術後の逆流性食道炎や吻合部狭窄を起こしてしまうと逆にQOLを大きく低下させてしまうことになる.このようなことからLPG後の食道残胃吻合再建では様々な逆流防止の工夫が報告されているが,いまだ標準術式とされる再建法はない.腹腔鏡下やロボット支援下で行うにあたり,手技的にも簡便であることも重要である.
われわれは2014年に逆流防止機構を備え,腹腔鏡下でも比較的簡便に行える食道残胃吻合法としてSide overlap with fundoplication by Yamashita(SOFY)法を考案し,2017年に報告した1).その後,より安定した治療成績を得るために,いくつかの点で改良を加え,modified SOFY(mSOFY)法として現在に至っている2).最近では多くの施設で施行されるようになってきたが,その中にはやってみたがうまく行かなかったという意見も散見される.mSOFY法における逆流防止機構はブタの胃や臓器モデルを用いて検証済みであり,正しいmSOFY再建を行えば良い治療結果が得られると考えている.本稿ではmSOFY法における重要ポイントについて詳しく解説する.
利益相反
講演料など:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
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