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日外会誌. 123(5): 438, 2022

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手術のtips and pitfalls

「腹腔鏡下噴門側胃切除術後再建における食道残胃吻合」によせて

山梨大学 医学部第1外科

河口 賀彦



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近年,本邦ではピロリ菌除菌が普及した影響で,ピロリ菌起因による胃癌は減少している反面,胃噴門部癌や食道胃接合部癌が増加しています.胃上部癌に対する根治術は胃全摘術が基本でしたが,胃癌治療ガイドライン第4版において,cT1N0と診断し,胃の1/2以上を温存できる症例に対しては,縮小手術として噴門側胃切除術も考慮されると記載されました.
噴門側胃切除術は胃全摘術に比較して,胃温存によるビタミンB12の吸収障害予防や小胃症状改善に優れているとされ,術後の体重減少や栄養状態低下に関しても噴門側胃切除術が有用であったとの報告がなされています.一方,胃癌の好発部位である胃体中下部を温存するため,残胃の定期的な観察が重要になります.これらを踏まえ,噴門側胃切除術後の再建法はもっと生理的である食道残胃吻合が多く行われてきました.しかし胃酸や食物の逆流などから重度の逆流性食道炎を発症するため,逆流防止機構を併用することが必須でした.逆流防止の工夫として上川らは,1998年に胃漿膜筋層をフラップ状に用いた観音開き再建を報告し,その良好な成績から開腹手術における噴門側胃切除術の標準術式の一つとなりました.さらに近年の腹腔鏡の普及により,腹腔鏡手術でも上川法が施行されるようになってきました.本稿では本邦で腹腔鏡下に数多く上川法を経験されている布部創也先生にその手技とポイントを図解にて解説いただきます.またこの上川法は手縫いが基本であり高度な技術を要するため,様々な器械吻合が開発されました.その中でも代表的な再建法の一つであるmSOFY法を,開発者である山下好人先生に解説していただきます.
腹腔鏡下噴門側胃切除術をこれから導入される御施設の先生や,すでに導入されている先生がたにも,エキスパートによる手術手技のコツなどを論じていただいておりますので,今後の手術における一助になれば幸いです.

 
利益相反:なし

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