日外会誌. 123(4): 358, 2022
手術のtips and pitfalls
「胃十二指腸潰瘍穿孔部を閉鎖するための具体的手術手技の共有―大網を用いる方法と空腸を用いる方法―」によせて
川崎市立川崎病院 外科 萬谷 京子 |
胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する緊急手術において,大網被覆術・大網充填術は長年にわたって各施設で実施されてきました.2019年のNCDの年次報告によると,「大網充填術または被覆術(胃十二指腸潰瘍穿孔)」は2,719件登録されており,これまでに多くの外科医が経験してきた手術であると考えます.
しかしながら,その具体的手術手技については,各医師が,過去の経験・自施設のカンファレンス・研究会・学会・論文・専門書などから学んだことに基づいて,緊急手術の最中に最適な方法を大至急検討し,実施しているのが現状であり,「外科医皆で完全に共有している標準的方法」として明確なものが,まだないように拝察いたします.
また,胃・十二指腸潰瘍穿孔時あるいは再穿孔時などの緊急手術において,既往・手術歴などにより,大網がない,あるいは大網を使用できない場合,空腸漿膜パッチ術が有用な場合があります.本術式に関しては,めったに経験することがないため,具体的手技を知る機会が少なく,「外科医皆で完全に共有している標準的方法」として明確なものが,やはりまだないように拝察いたします.
そこで今回は,胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する大網被覆術・大網充填術,空腸漿膜パッチ術についてのtips and pitfallsをテーマとさせていただきました.
大網被覆術・大網充填術については,湘南慶育病院外科・消化器外科和田則仁先生に,腹腔鏡手術の工夫を含む具体的手技について詳述していただきました.空腸漿膜パッチ術については,淀川キリスト教病院集中治療科加藤昇先生に,原法とご経験に基づいて,具体的手技について詳述していただきました.
皆様が今後経験される胃・十二指腸潰瘍穿孔時・再穿孔時などの緊急手術の際に,参考にしていただけましたら幸いです.
利益相反:なし
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