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日外会誌. 123(2): 195-199, 2022

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手術のtips and pitfalls

Clamp Crush法による肝離断

岩手医科大学 外科学講座

新田 浩幸



キーワード
Clamp Crush法, 腹腔鏡下肝切除術

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I.はじめに
肝離断法の一つにClamp Crush法がある1).鉗子などにより肝実質を破砕し,残ったグリソン鞘枝や肝静脈枝を処理して肝離断をすすめる手法であるが,腹腔鏡下肝切除術においても開腹下肝切除術と同様に行うことができる2).うまく行うコツは開腹下と同様であり,Pringle法などにより肝流入血流を遮断すること,術者と助手で肝離断面に適度な緊張をかけること,肝離断面を過度に熱凝固しないことである.肝離断面が開くまでは適度な緊張をかけられないため,主にエネルギーデバイスを用いて肝離断をすすめる.また,熱が加わった肝実質はうまく破砕されないため,離断前の肝実質に対してのソフト凝固などによる止血はなるべく避けた方が良い.グリソン鞘や肝静脈周囲にまとわりつくように肝実質が付着しており,閉じた鉗子先でなでるように索状物を露出する必要がでてくる.肝離断時の出血コントロールについては開腹下よりも腹腔鏡下の方が行いやすい.気道内圧や中心静脈圧を適切に保つことで,気腹圧の効果により肝静脈系の出血は軽減する3).Pringle法を併用することで肝離断面の出血は最小限となり,ドライな術野で肝離断をすすめることができる. Clamp Crush法のメリットは,特別な手術機器が不要であり,面での肝実質破砕であるため離断面が整いやすいことにある.低コストで手術機器が少ないシンプルな手術となり,ロボット手術への移行もしやすい.腹腔鏡下手術は拡大視効果により精緻な操作が可能となる一方で全体を把握しづらいため,肝離断面が不整となることもある.この点においては面で肝離断をすすめるClamp Crush法は腹腔鏡下手術にむいているとも言える.しかし,高度な硬変肝では肝実質を破砕しづらいデメリットもある.CUSA(Cavitron Ultrasonic Surgical Aspiration system)とは異なり先端に吸引機能が無いため,肝実質が破砕されなければ索状物が露出されない.この場合,自身は鉗子先を少し実質内に押し込み,その部位でゆっくり鉗子先を開くことで索状物を露出している.
腹腔鏡下肝切除術におけるClamp Crush法は,適切な呼吸循環管理,手技のコツ,注意点を理解することで安全に施行可能な有用な手技と考えている.

 
利益相反:なし

図1 図2 図3 図4 図5 図6 図7

図01図02図03図04図05図06図07

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文献
1) Takayama T , Makuuchi M , Kubota K , et al.: Randomized comparison of ultrasonic vs clamp transection of the liver. Arch Surg, 136: 922-928, 2001.
2) Hasegawa Y , Nitta H , Takahara T , et al.: Pure laparoscopic living donor hepatectomy using the Glissonean pedicle approach (with video). Surg Endosc, 33: 2704-2709, 2019.
3) Kobayashi S , Honda G , Kurata M , et al.: An Experimental Study on the Relationship Among Airway Pressure, Pneumoperitoneum Pressure, and Central Venous Pressure in Pure Laparoscopic Hepatectomy. Ann Surg, 263: 1159-1163, 2016.

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