日外会誌. 123(2): 194, 2022
手術のtips and pitfalls
「腹腔鏡下肝切除術における肝離断法のtips and pitfalls」によせて
横浜市立大学附属市民総合医療センター 熊本 宜文 |
今回の「手術のtips and pitfalls」は腹腔鏡下肝切除術における肝離断法とさせていただきました.腹腔鏡下肝切除術は2010年4月より部分切除および外側区域切除が保険収載され,さらに2016年4月に亜区域切除,区域切除以上の肝切除まで適応が広がり,胆道あるいは血行の再建を伴わないすべての肝切除術が保険収載されています.このため,腹腔鏡下肝切除術は急速に普及してきており手術数は増加の一途にあります.肝切除術は開腹手術でも高難度であり,腹腔鏡下では拡大視効果や気腹による静脈系出血の抑制があるものの開腹手術より難易度が高くなるものと考えられます.
肝切除術で重要な手技の一つに肝実質を破砕し,残った脈管を結紮切離する肝離断法があります.開腹手術での肝離断法は指を用いて肝実質を破砕するfinger fracture法から始まり,1970年代にペアンなどを用いて破砕するClamp Crush法,1980年代に水流を用いて破砕するウォータージェットメス,1990年代にCUSAなどの超音波破砕吸引装置が報告されており,現在では開腹肝切除,腹腔鏡下肝切除ともに,Clamp Crush法とCUSA法が用いられることが多くなっています.
腹腔鏡下肝切除術が保険収載され10年以上経過し,肝離断法についても定型化してきています.今回はClamp Crush法とCUSA法による肝離断法についてエキスパートの先生方にtips and pitfallsを解説していただきました.Clamp Crush法による肝離断については,岩手医科大学の新田浩幸先生に,CUSAを用いた肝離断については,東京女子医科大学の川本裕介先生,本田五郎先生に解説をお願いし,豊富なご経験に基づいて詳述していただいています.
今回の企画が今後会員の皆様が行う腹腔鏡下肝切除術の参考となり安全な腹腔鏡下肝切除術の普及に少しでも貢献できれば幸いです.
利益相反:なし
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。