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日外会誌. 123(2): 147-149, 2022

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理想の男女共同参画を目指して

日本小児外科学会における男女共同参画への取り組み

日本小児外科学会ワークライフバランス検討委員会担当理事,杏林大学小児外科 

浮山 越史

内容要旨
日本小児外科学会会員における女性会員の割合は増加している.女性小児外科医のキャリア継続とモチベーションの維持は重要な課題である.日本小児外科学会ではワークライフバランス検討委員会を中心に,男女共同参画について議論し,女性評議員のクオータ制を実現している.女性会員によって学会運営が活性化し,そのことが,女性会員のモチベーションの向上,維持に役立つことを期待している.

キーワード
男女共同参画, 女性小児外科医, ワークライフバランス, 女性医師のキャリアデザイン

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I.はじめに
日本小児外科学会の学会員数は減少している.その一方で,女性会員の割合は増加している(図1).男女共同参画は小児外科医療の発展にとって重要なポイントの一つである.日本小児外科学会では,2012年にワークライフバランス(WLB)検討委員会が小児外科医の労働条件の改善,男女共同参画の推進を目的として立ち上げられた.WLB検討委員会の活動を中心に,男女共同参画の問題点,現在の取り組みと将来の展望を報告する.

図01

II.男女共同参画
日本小児外科学会における女性会員の割合は年々増加し,約17%である(図1).学会員の減少の中,女性会員の重要性も増している.
各年代における女性会員の割合をみてみると,2020年度では,20代が28.9%,30代が23.7%,40代では24.3%,であるのに対し,年代ごとにその割合は減り,50代では13.6%,60代では4.4%,70代では3.8%となっている.日本小児外科学会会員の脱会の年齢は,男性は30代までに54%脱会するのに対し,女性では82%が脱会していた1).結婚,妊娠,出産,子育てといった30代までの人生におけるイベントの影響によって,女性会員が小児外科医として継続していくことが困難となっている可能性がある.

図01

III.日本小児外科学会,WLB検討委員会の取り組み
2012年に日本小児外科学会にWLB検討委員会が設置された.会員(特に女性会員)のキャリア継続支援,男女共同参画(多様性,ダイバーシティ)の実現,ワークライフバランスの適正化の3点を重要ポイントとしている2).春の学術集会,秋の秋季シンポジウムごとに講師を招いての講演か,委員会主催で特別企画を開催している.
日本小児外科学会の理事選挙の選挙権を持つ女性評議員の割合は少なかった.2015年時点で,女性会員が全体の約15%に対し,女性評議員の割合は6.2%であった.2015年に学術集会においてオープンセミナーを企画し,アンケートにて,女性評議員枠(クオータ制,割り当て制)の導入は68.3%が「賛成」であった.その結果から,全評議員数の10%に足りない分を割り当てるクオータ制の導入が,2017年の評議員選挙から行われることとなった.クオータ制を導入後女性評議員の割合は,2年毎の選挙で2017年に6.5%,2019年に8.0%,2021年に10.6%と増加している.それに伴い,委員会委員の女性の割合,委員会委員長の女性の割合,評議員選挙女性立候補者数も増加してきている.
また,理事会主導で女性理事枠の作成を目指している.

IV.男女共同参画の将来
2024年から“医師の働き方改革”が実施される予定であり,小児外科医不足が懸念され,小児外科における男女共同参画が必要であることは明らかである.2013年と2020年の女性会員数を比較すると,20代,30代では減少しているが,40代,50代,60代では増加している(図2).全体の会員数が減少している中,これらの女性会員がキャリア継続していることが考えられ,一つの要因としてWLB検討委員会の活動の効果が表れていると評価したい.
小児外科の男女共同参画実現のためには,学会,職場,家庭において,個々の意識改革,組織改革,成熟した社会の形成が必要である3).学会としては女性の小児外科専門医,指導医,評議員,理事が増加することが,女性会員による学会運営を活性化し,女性会員のモチベーションの向上,維持に役立つことを期待している.また,女性の学生,初期研修医,外科研修医に小児外科医として活躍する道筋も示すことができる.

図02

V.おわりに
男女共同参画は,必要であるが,実現には困難を伴う.他の要因にも配慮しつつ,一つ一つ進めていくことが,将来の小児外科全体のためになることを願う.

 
利益相反:なし

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文献
1) 浮山 越史 , 森井 真也子 :小児外科と男女共同参画.小児外科,53:14-17, 2021.
2) 中原 さおり :女性外科医の活躍推進―ダイバーシティー時代を迎えて―日本小児外科学会の取り組み.日外会誌,118(1): 103-105, 2017.
3) 廣部 誠一 :外科医の待遇―明るい未来のために―日本小児外科学会の立場から.日外会誌,117(5): 444-446, 2016.

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