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日外会誌. 123(1): 133-135, 2022

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定期学術集会特別企画記録

第121回日本外科学会定期学術集会

特別企画(9)「リーダーを担う女性外科医の育成」
6.わが国の女性外科医がリーダーシップを発揮するためのヒント―アメリカ外科学会での女性外科医のリーダーシップ教育の例

1) 東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター外科
2) アメリカ外科学会日本支部 

川瀬 和美1)2) , 長谷川 潔2) , 江口 晋2) , 北川 雄光2) , 島田 光生2) , 髙折 恭一2) , 吉田 和彦1)2) , 矢永 勝彦2) , 國土 典宏2)

(2021年4月10日受付)



キーワード
女性外科医, リーダーシップ教育, アメリカ外科学会

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I.はじめに
わが国の女性外科医は増加しているものの,いまだにリーダーシップを発揮できていないのが現状である.図1は日本,アメリカ,フィンランド,香港4か国の女性医師の調査で,主要学会の委員会や研究班のメンバーになっている人の割合を見たものだが,日本だけ有意に低いことがわかる1).理由として,女性が外科医としての仕事に比し,家事育児などの労働に重きを置かざるを得ない点,単にメンターとして助言や指導するだけでなく,ジェンダーバイアスやマイクロアグレッションと呼ばれる無意識の偏見を押してリーダーへ登用したり,リーダーに必要な機会を与えてくれるようなスポンサーとなる指導者がいない点だけでなく,女性外科医自身のリーダーへの自覚やリーダーシップ教育が不足していることがあげられる.筆頭演者はアメリカ外科学会(American College of Surgeons; ACS)のWomen in Surgery Committee(WiSC)委員として数年にわたり女性外科医のリーダー育成プログラムを経験した.わが国での女性外科医リーダー育成のため有用な情報と考えられるので共有したい.

図01

II.ACSの理念と活動
ACSは1913年に創立され,現在会員数は8万2,000人で,海外にも130か国6,600人の会員がいる.外科医の標準を引き上げるとともに,診療の水準を上げるため様々な活動や教育を行っている.WiSCはいろいろな立場のメンバーで構成され,年齢や診療のタイプによらず全ての女性外科医がプロとして個人の資質を高め,一体となってお互いを敬い高め合い,専門キャリアの更なる向上のための場を提供することに加え,女性外科医がリーダーとして前進できるようにするという理念を持っている.

III.ACSのリーダーシップ教育
ACSのリーダーシップ教育プログラムの例を挙げる.
1.Surgeons as Leadersは男女を問わず,現在指導的立場にある人だけでなく,リーダーを志す人,指導力を生かしたい人が参加するプログラムで毎年開催される.プログラムは計4日間にわたり,早朝から夜遅くまでリーダーシップとはどういうことか,から始まり,困ったときの対処,チームワークについて等,様々な講義やグループディスカッションなどが盛り込まれている.
2.Leadership Summitは全米および海外の支部の幹部や各委員会委員などが参加し,自らの指導力を更に磨き,新しい考え方を学ぶ目的で開催されている.毎年テーマは変わるが,リーダーとしてのコミュニケーション能力の向上,戦略的な思考法,情動的理解力,複雑なチームの率い方,ストレス対処と立ち直り方,レジデントやフェローの教育の仕方等々,教育セッションには毎回数名の専門家を招いて講義を受ける.
3.WiSCでは,更にこの会の前日に委員会を開くとともに,女性外科医リーダーシップセミナーを開催している.著名な女性外科医(例;2016年:第98代ACS 会長で,GW School of Medicine and Health Sciences学長Dr. Barbara Bass,2017年:世界の発展途上国での外科医療に貢献されているStanford University教授Dr. Sherry Wren,2018年:胎児手術の世界的な権威のUC Davis教授Dr. Diana Farmer等)がファシリテーターとなり,参加者は数グループに分かれて日常遭遇するいくつかの困難な問題をどう解決・対処していくかをグループ討論し,発表する.

IV.ACS,WiSC,AWSの協同体制
アメリカ女性外科医会(Association of Women Surgeons;AWS)は3,000人を超えるメンバーがおり,学生や研修医を含む女性外科医のキャリアアップを目指し,いろいろな教育を行っている.しかしさらにそれだけでなく,ACSが主体となりWiSCの活動を推進し,更にAWSと協同で強力に女性外科医を牽引していく体制が整えられている

V.わが国でできることは
わが国にも日本女性外科医会(Japan Association of Women Surgeons;JAWS http://jaws.umin.jp/)が存在し,交流会や勉強会など開催し活動している.またACSの日本支部https://www.secretariat.ne.jp/acsjpn/admission.htmlも,現在275人のアクティブメンバーが活動している.これらに積極的に参加することでいろいろ学べることが多いので,ぜひご参加いただきたい.今後わが国でも日本外科学会が率先して男女共同参画委員会とJAWS協同体制を作り,女性外科医のリーダーシップ教育を行い,女性外科医の活躍を更に促進させる必要があろう.そのためにはACS日本支部も協力を考えている.

VI.おわりに
数多くの女性外科医が指導的ポジションで活躍しているアメリカでは,学会が率先して女性外科医のリーダーシップ教育を行っている.わが国でもJAWSと日本外科学会が協同して女性外科医リーダー育成プログラムを構築すべきと考える.

 
利益相反:なし

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文献
1) Kawase K, Carpelan–Holmström M, Kwong A, et al.: Factors that can promote or impede the advancement of women as leaders in surgery: results from an international survey. World J Surg, 40: 258-266, 2016.

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