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日外会誌. 123(1): 11, 2022

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特集

Modern Surgeon-Scientistによる恒常性維持器官の外科研究

1.特集によせて

広島大学 消化器・移植外科学

大段 秀樹



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今日,隆盛を見ている学術領域の中には,surgeon–scientistによる革新的業績に端を発するものが少なくない.例えば,免疫チェックポイント阻害薬の登場により癌研究の新潮流となった「腫瘍免疫」の起源は,外科医William Coley氏の研究にさかのぼる.米国のColey氏は,肉腫患者が丹毒に感染し,高熱を出した後に腫瘍が消失したことに気がつき,意図的な丹毒感染による癌治療を行って延命したことを報告した.20世紀の奇跡と言われた医療革新である臓器移植の第一歩は,1902年にフランスの 外科医Emerich Ullmann氏が犬を使った移植実験から始まったと言われている.最近のことでは,iPS細胞を開発した山中伸弥氏は,かつて整形外科医として担当したリウマチ重症患者の全身の関節変形にショックを受け研究者を志すようになったという逸話が知られている.これらは,患者の痛み・苦しみを共感して,必要とされる治療手段をよく知るsurgeon-scientist,あるいはsurgeonとしての経験を経たbasic-scientistが学術の先鞭をつける役回りを担った実例である.
ポストゲノム時代に生きるmodern surgeon-scientistは,バイオテクノロジーの進化に追走しつつ苦戦を強いられている.本特集では,現在輝きを放っているmodern surgeon-scientistあるいはsurgeonとしての才覚を併せ持つbasic-scientistの方々から研究の概要をご紹介いただき,surgeon-scientistであり続けるための道標をお示しいただいた.

 
利益相反:なし

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