日外会誌. 122(3): 344-346, 2021
手術のtips and pitfalls
将来のvalve in valve TAVRを見据えた生体弁SAVRのtips and pitfalls
獨協医科大学病院 ハートセンター心臓・血管外科 福田 宏嗣 , 斎藤 俊輔 |
キーワード
生体弁, valve in valve TAVR, 冠動脈閉塞, patient-prosthesis mismatch, 弁輪拡大
Ⅰ.はじめに
近年,外科的大動脈弁置換術(SAVR)では生体弁の利用が増加しており将来的な再手術の増加の可能性が予想されている.一方,経皮的大動脈弁置換術(TAVR)は2000年代初頭に人で初めて施行されその後,デバイスの進歩,移植技術の改善や多くの臨床試験により安全性・有効性が明らかにされ現在,high risk,intermediate症例だけでなくlow risk症例にも適応が拡大されようとしている.適応年齢も最近改定された日本のガイドラインでは80歳以上はTAVRを,75歳未満はSAVRを推奨しているが1),今後TAVR弁の10年以上の耐久性が明らかになればTAVRの適応年齢は更に下がる可能性が考えられる.更に生体弁移植後の再手術にTAVRを適応する(ViV TAVR)ことが2000年代半ばに行われ,SAVR後の再手術の代替え案として日本でも保険償還された.このようにTAVR弁を含めた生体弁の使用増加や再手術時のViV TAVRの適応で,大動脈弁治療における弁選択のパラダイムシフトが起こっており,患者のライフスタイルを考慮し再手術を前提とした生涯にわたる治療プランが必要になっている.その中で将来のViV TAVRを見据えたSAVR時の生体弁の選択や移植方法が重要である.
ViV TAVRを見据えたSAVR時の生体弁の選択はまずそれぞれの生体弁の遠隔期を含めた特徴を把握することが第一である.続いてViV TAVRの問題点として生体弁にTAVR弁を挿入するために冠動脈口の閉塞や術後残存圧格差が指摘されており,それぞれの生体弁がこの問題点にどのように関わるか理解が必要である.冠動脈口の閉塞はViV TAVR術前の画像診断である程度予測がつき,high risk患者にはそれを回避する方法も提唱されているが,生体弁の種類としては外巻き弁やステントレス生体弁で冠動脈閉塞のリスクが高いと報告されている2).
術後残存圧格差の問題は元々prosthesis-patient mismatch(PPM)を呈した患者では術後もPPMとなり予後不良とされている.また21mm以下の生体弁では23mm以上と比較し圧格差が大きくなることが報告されている.これに対し生体弁のステントフレイムをバルーンで破断させたり,最近はこの部位が拡大するように設計されている生体弁もある.しかし先ずは初回手術時により大きな生体弁を移植することが重要である.そのためには生体弁縫着法として全周結節縫合によるintra-annular positionによる縫着3)や無冠尖の弁輪部へ大動脈切開を延長し弁輪拡大を行い大きな弁を縫着する弁輪拡大法がある.ここでは,この弁輪拡大法による生体弁縫着を図で示す.
利益相反
奨学(奨励)寄附金:エドワーズライフサイエンス株式会社,日本メドトロニック株式会社
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