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日外会誌. 122(2): 214-216, 2021

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定期学術集会特別企画記録

第120回日本外科学会定期学術集会

特別企画(5)「地域を守り,地域で生きる外科医たちの思い」 
3.地域医療を支える若き外科医たちの育成

弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座

坂本 義之 , 石戸 圭之輔 , 西村 顕正 , 木村 憲央 , 諸橋 一 , 三浦 卓也 , 脇屋 太一 , 室谷 隆裕 , 袴田 健一

(2020年8月14日受付)



キーワード
弘前大学, 外科専門研修プログラム, 地域医療

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I.はじめに
人口約130万人,二次医療圏を六つ抱える青森県は,医師不足が深刻なだけでなく,癌死亡率も全国屈指の高水準である.特に癌治療に欠かせない手術療法を行う外科医不足は顕著で,県内唯一の医学部を抱える当大学が,外科医育成に果たす役割は非常に大きい.地理的には本州の最北端に位置し,三方を海に囲まれ,平野とともに山林地帯も多い.漁業,リンゴや野菜,稲作など第一次産業を中心とした県であるため,①農作物の収穫時期には病院受診できない患者が多い,②経済的な理由で治療できない,③併存疾患をもつ高齢患者が多い,などこの地域の外科医は,地域独特の患者背景を深く理解しなくてはならない.その中で,今後この地域の外科医療を担っていく若き医師達の育成システムについて論じてみたい.

II.弘前大学外科専門研修プログラム
弘前大学の外科専門研修プログラムでは,専門研修基幹施設を弘前大学医学部附属病院(統括責任者:袴田健一)とし,北海道,青森県,秋田県,山形県にまたがる連携施設28施設による修練を行い,多様性を持った外科専門医取得を目標としている.全施設を合わせた年間の手術件数は約1万件であり,それらを指導する日本外科学会指導医を1回以上更新した研修指導医の数は100名を超えている.そういった環境の中で募集している専攻医の数は,3年間で45名となっている.その結果,現在当講座の若手医師達は1人当たり年間150~300症例の手術を経験している.プログラムはコースが二つ用意され(図1),さまざまなサブスペシャルティプログラム選択に対応できるようになっている.コース1では初期臨床研修を終えた後にプログラムに参加し,専門研修1年目は連携施設で修練を行い,2年目および3年目は基幹施設で修練を行う.一方,コース2では初期臨床研修の後,1年目に基幹施設および2年目に連携施設で修練を行った後に基幹施設で修練を行うものである.これらは,専攻医が希望する今後のサブスペシャルティ領域の修練に合わせたプランとなっている.実際,昨年の専攻医達の経験症例数を調べてみると,手術経験数,執刀医数は図2図3のようになっており,外科専攻医1年目で外科専門医を取得するために必要な経験数をクリアできる程度になっていた.

図01図02図03

III.セールスポイント
セールスポイントは(1)第一次産業が中心の地域で修練ができ,医師としての多様性を修得可能である点,(2)消化器外科,乳腺外科,甲状腺外科,小児外科,呼吸器外科,心血管外科などほぼ全領域にわたるサブスペシャルティ専門医を見据えて研修可能な点,(3)Acute Care Surgeryやロボット手術を含めた鏡視下手術など最先端の手術が研修可能である点,(4)外科専門医修練期間中に大学院入学により学位取得をめざすことも可能,などが挙げられる.その過程で,外科専門研修の到達目標,経験目標をクリアするだけではなく,「患者さんから学ぶ」をモットーに患者の疾患のみならず,社会的背景,地域的特性および医療環境を見据えた外科医療を学ぶことができると考えている.

IV.おわりに
新専門医制度では,地域医療への貢献と研修の質の向上を目標としており,自施設のような地域の大学病院にかかる期待が極めて大きくなるものと考えられる.患者を「手術患者」としてだけではなく,「病気を患った一人の人間」として全人的に診療する人間性の練磨こそが,地域医療を支える「真の外科専門医」を育てていくプログラムに必要不可欠であるということを提言したい.以上,弘前大学外科専門医研修プログラムについて述べてきたが,まとめると確実な外科技術を修得した外科専門医,外科専門医の名に恥じぬ業績,エリアニーズに応えられる外科専門医の育成を目指し,また外科医療のみならず,地域医療を含む総合的なスキルを持つ多くの外科医を増やしたいと考えている.

 
利益相反:なし

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