日外会誌. 122(1): 1, 2021
Editorial
これからの学術集会の在り方を考える
防衛医科大学校 長谷 和生 |
近年,学会や研究会の数が多いかといえば,明らかに多いと思われる.それは,新たな研究手法や臨床的手技が見出されるとそれに応じた新しい学会や研究会ができ,その一方で消滅するものが少ないためであろう.学会や研究会に入会するか否かは本人の裁量であるが,多いと年会費だけでも結構な額となる.
学会や研究会の主要な事業の一つとして学術集会の開催が挙げられる.学術集会は,言うまでもなく研究成果を発表したり,議論したりする場であり,また最新の研究情報を得たり,情報交換を行う場である.その結果,自らの専門領域の臨床・研究を活性化するのみでなく,専門外の知識・技術をブラッシュアップすることもできる.さらに専門医等の申請や更新に必要な単位の取得,懇親会などを通じての人事交流,また特に地方の学術集会では日常業務を離れた息抜き的な観光なども学術集会を通じて得られる.このように学術集会の意義は高いが,問題点として,①参加する学術集会の数が多いと,それに伴う費用,時間,労力などの負担が大きくなる,②各学術集会におけるシンポジウムやパネルディスカッション,ワークショップなどのテーマや内容が類似,重複したものになりやすい,③学術集会運営費用の主力は企業からの支援であるが,その資金集めが年々厳しくなってきている,などが挙げられる.
そういう中,日本消化器関連学会週間(JDDW)のように,種々の学術集会が同時期,同会場にまとめて開催すればこれらの問題を解決しうる.日本外科学会「学術集会の在り方」WGが行った「学術集会の在り方に関するアンケート調査」の報告1)によると,「JDDWのように複数の学会のプログラムを合同化して開催するのではなく,その移行措置として,同じ日程に同じ都市で複数の学会を同時開催する形式の“Surgical Expo(仮称)”」に賛成は19%,どちらかと言えば賛成37%,部分的に(修正を加えて)賛成が18%と,約3/4の会員が概ね賛成であった.その際には,日本外科学会定期学術集会では総論的な議論を重点的に行い,各論的な内容については各臓器別の全国規模の学会学術集会で重点的に行う方向のようである.今後このような開催方法の実施に向けての更なる検討が行われるべきと考えられる.
一方,新型コロナウイルス流行によりweb開催により行われる学術集会が増えつつある.web開催のメリットは,学術集会会場へ行く費用,時間,労力を省くことができること,会期中に発表内容を何度もゆっくりと聴講できること,会場利用費や招聘者などの旅費・宿泊費,運営会社派遣人件費などを省いて,学術集会運営費用全体を削減できること,など多数ある.しかしその一方で,顔を合わせての自由な議論や意見交換をしにくく,議論が深まらない可能性などがあるなどのデメリットもある.しかし今後ITのハード面,ソフト面の更なる進歩に伴いweb開催方法も進化するであろうことから,従来の学術集会運営法に加えてwebの良さを生かした運営が更に進化することが望まれる.
利益相反:なし
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