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日外会誌. 121(6): 639-642, 2020

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手術のtips and pitfalls

側臥位の立場から

秋田大学医学部附属病院 食道外科

本山 悟 , 佐藤 雄亮



キーワード
食道癌, ロボット支援手術, 側臥位

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I.はじめに
ロボット支援胸腔鏡下食道切除術は2018年度の保険適用を契機に全国で急速に普及しつつある.
本邦では,1994年,赤石らによって胸腔鏡下食道切除術が初めて側臥位で行われて以降,すべての胸腔鏡下食道切除術は側臥位で行われてきた.ところが,2006年,宇山らによって本邦で初めて腹臥位胸腔鏡下食道切除術が実施されて以降,腹臥位手術は肺の圧排が不要なこと,術野に血液や浸出液が溜まらないことが大きなメリットとして多くの外科医に受け入れられ急速に普及した.同時期に普及した二酸化炭素人工気胸による縦隔の拡大,術野からのoozingの抑制もこの普及に大きく関与している.しかし,人工気胸は腹臥位手術のみならず,その後側臥位手術でも用いられるようになり,側臥位手術が再評価される結果にもつながった.このような状況下に導入されたロボット支援胸腔鏡下食道切除術は本邦では2009年,宇山らによって腹臥位で開始され,手術のノウハウは体位も含めて全国各施設に継承された.一方,筆者らは側臥位手術のメリットを生かすべく,2014年の開始当時から一貫して側臥位でロボット支援胸腔鏡下食道切除術を実施してきた.しかし,腹臥位,側臥位共に,約20°程度体位をそれぞれ背側,腹側に傾けるため,最終的には双方の違いは50°程度となる.また,側臥位であってもペイシェントカートは患者背側から入るため,腹臥位,側臥位それぞれの術野画像の違いはカメラの挿入角度の違いだけとなり,一般的には同じような術野画像が映し出される.
側臥位手術の腹臥位手術に対する優位性は,第1に,緊急開胸が必要になった際,瞬時に,容易に開胸手術に移行できることである.ロボット支援手術の急速な全国普及のなか,最も優先されるべき点は安全性の担保であり,この点において側臥位に優位性がある.第2に,気管の展開次第ではあるが頸胸境界部の気管左側領域の視野と操作性に若干優れていることである1).一方,術野への血液,浸出液の貯留においてはデメリットとなるが,そもそもロボット支援手術では胸腔鏡手術以上に拡大視野で手術を行うため出血は限りなくゼロに近く,大きなデメリットにはならない.各施設および術者の経験と手術理論のもと,それぞれが最適と思われる体位で,今後益々ロボット支援手術の優位性を生かした高精度の食道癌手術が展開されてゆくと思われる.

 
利益相反:なし

図1図2図3図4

図01図02図03図04

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文献
1) Motoyama S, Sato Y, Wakita A, et al.: Extensive lymph node dissection around the left laryngeal nerve achieved with robot-assisted thoracoscopic esophagectomy. Anticancer Res, 39: 1337-1342, 2019.

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