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日外会誌. 121(3): 369, 2020

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生涯教育セミナー記録

2019年度 第27回日本外科学会生涯教育セミナー(近畿地区)

「各分野のガイドラインを紐解く」によせて

日本外科学会教育委員会近畿地区委員長,和歌山県立医科大学外科学第2講座 

山上 裕機

(2019年9月28日受付)



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癌診療をはじめ多くの疾患で診断・治療に係るガイドラインが発刊されていますが,ベッドサイドにおける個別の患者の治療をどう展開するかについての考察が必要です.このような医学的背景を受けて主要な癌診断・診療ガイドラインを各分野のエキスパートに講演して頂くことになりました.
まず,奈良県立医科大学外科学の池田直也先生から乳癌のガイドラインを解説して頂きました.薬物療法改訂のポイントでは,化学療法におけるDose-dense化学療法を,内分泌療法からはサイクリン依存性キナーゼ 4/6阻害薬に関する内容が抜粋されました.
つぎに肺癌では,和歌山県立医科大学内科学の山本信之先生が非小細胞肺癌の治療概略について解説されました.Stage Ⅲでは,薬物療法と胸部放射線の同時併用療法が標準的治療として確立されていることが解説されました.とくに免疫チェックポイント阻害剤の使用法とゲノム診断に関する新しい知見について講演頂きました.
大腸癌は熊本大学外科学の馬場秀夫先生から,直腸癌に対する腹腔鏡手術の長期成績が相次いで報告され,腹腔鏡手術は許容されると考えられます.ロボット支援下直腸手術は,腹腔鏡手術と同等の手術成績が報告されており,今後も急速に増加していくと考えられます.
最後に,大阪大学外科学の江口英利先生が膵癌ガイドラインについて解説されました.切除可能膵癌に対する腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術については,前版と同様,行わないことを提案する(行わないことを弱く推奨する)との記載がなされた一方で,腹腔鏡下膵体尾部切除術は行うことを提案する(弱く推奨する)ことが新たに記載されました.
以上のように,診療・治療のガイドラインは新しく発信された質の高いエビデンスによって改訂され続けていきます.われわれ外科医はエビデンスに基づいた質の高い外科診療を行うために,ガイドラインに習熟することが必要といえます.

 
利益相反:なし

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