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日外会誌. 121(2): 218, 2020

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手術のtips and pitfalls

「縦隔アプローチによる食道癌根治術」によせて

浜松医科大学 医学部外科学第二講座

菊池 寛利



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胸部食道癌に対する食道切除術は,従来の開胸手術に加え,近年胸腔鏡下手術が急速に普及してきております.従来の開胸手術に対する胸腔鏡下食道切除術の非劣性は,現在多施設共同ランダム化比較第Ⅲ相試験(JCOG1409)で検証中ですが,胸腔鏡下食道切除術は従来の開胸手術に対し,胸壁破壊の軽減や出血量の減少,高解像度カメラによる拡大視効果などの利点があると考えられており,近年の普及に繋がったものと思われます.さらに,2018年にDa Vinci Surgical Systemを用いた胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術が保険収載されたことから,ロボット支援胸腔鏡下手術も徐々に広がりをみせており,胸部食道癌に対する術式の多様化が進んでいます.一方,胸腔鏡下食道切除術もロボット支援胸腔鏡下食道切除術も,開胸手術と同様に経胸アプローチであるため,併存疾患や治療の既往などにより施行困難な症例も少なくありません.
そこで,非開胸による縦隔アプローチが注目されており,片肺換気が不要で胸壁破壊も生じないことから,術後呼吸器合併症の低減や,低肺機能症例への適応などが期待されています.2018年に「縦隔鏡下食道悪性腫瘍手術」が新たな術式として保険収載されたこともあり,今後多くの施設で施行される可能性がありますが,縦隔内は術野が狭く鉗子の制限もあり,安全で確実なリンパ節郭清を行う為には十分な修練を要します.縦隔鏡下食道切除術では,頸部および腹部から縦隔にアプローチしますが,それぞれ通常の胸腔鏡や腹腔鏡下手術とは異なる手技が必要となります.
今回,縦隔アプローチによる食道癌手術のエキスパートの先生方にそれぞれ頸部から,腹部からの手術操作のポイントについて解説していただきました.今後会員の皆様が行う手術の参考となり,安全な縦隔鏡下食道切除術の普及に少しでも貢献できれば幸いです.

 
利益相反:なし

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