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日外会誌. 121(1): 75-82, 2020

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手術のtips and pitfalls

下部直腸癌に対するロボット支援手術

藤田医科大学 総合消化器外科

花井 恒一 , 勝野 秀稔



キーワード
ロボット手術, 直腸切除術, 下部直腸癌, 側方リンパ節郭清

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I.はじめに
下部直腸癌の手術は,骨盤内臓器,神経,血管などに囲まれた狭い骨盤内での操作を要し,癌の根治性,排便排尿,性機能などQ.O.Lに深くかかわることに加え,進行癌に対しては側方リンパ節郭清を要する難度の高い手術である.内視鏡下手術では,機器の開発が進み拡大視効果による骨盤内の膜構造,神経,血管走行など外科学的解剖を認識できる手術が可能になった.しかし,症例によっては,従来の開腹手術,腹腔鏡手術では骨盤深部の術野確保,鉗子やデバイスによる操作範囲が制限され,神経や血管損傷,不十分な病理学的腫瘍切離断端となりやすい.近年,術前補助療法や経肛門操作を併用する方法など様々な工夫が行われている.
ロボット支援システムが開発され,日本では2018年に直腸癌にも保険適用された.ロボット支援システムは①高解像度の3Dカメラ②鉗子の先端に自由度をもつ関節③手振れ補正④モーションスケーリング設定などの機能を有する.本システムを利用することで,下部直腸癌の手術においても,鮮明な画像の下で術者の意図に応じた安定した術野の確保や展開ができ,手振れなく組織に適度な緊張をかけることで剥離,授動,血管処理など精緻な手術が可能となる.
しかし,導入された当初のda vinci S, Si surgical system(インチューティブサージカル合同会社)では,患者に接続する本体(以下,patient-site cart)が巨大な容量をもつシステムのため,中枢側リンパ節郭清,直腸間膜の剥離授動,側方リンパ節郭清と広範囲な手術操作を要する下部直腸癌の手術では,patient-site cartのarm同士の干渉やそれに接続される鉗子(以下,EndoWristインストゥルメント)同士の干渉による稼働制限が生じた.そのため,骨盤内操作と腹腔内操作時では,ポート配置の工夫やpatient-site cartの移動が必要であった.バージョンアップされたda vinci Xi surgical system(インチューティブサージカル合同会社)は,patient-site cartの構造の改良に加え,縫合器や新たな鉗子,デバイスが開発され操作性,安全性が向上している.一方,ロボット支援手術では,触覚がなく組織にかかる緊張度合いの把握が難しく経験と視覚で補うことになる.また,術者はコンソールの中だけで操作していることから外の環境の状況を把握できない.助手,医療スタッフと連携をとることが重要である1)2).本稿では下部直腸癌に対するロボット支援手術の工夫と注意点につき述べる.
謝  辞
本稿執筆にあたり,田島陽介先生にイラストを担当していただきました.

 
利益相反:なし

図1図2図3図4図5図6図7図8

図01図02図03図04図05図06図07図08

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文献
1) 花井 恒一,前田 耕太郎,勝野 秀稔:ISRの新たな展開としてのロボット手術.外科,77(3): 302-308, 2015.
2) 花井 恒一,宇山 一朗,勝野 秀稔,他:直腸癌に対するロボット手術.消外,41(1): 27-39, 2018.

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