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日外会誌. 121(1): 10, 2020

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特集

蛍光ガイド手術の現状と展望

1.特集によせて

京都大学 乳腺外科

戸井 雅和



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蛍光ガイド手術,中でもインドシアニングリーン(ICG)を用いた手法の幾つかは日本発信の技術といってよい.ICG蛍光法を利用した手術は多くの領域で導入され,手法の標準化,国際化が進んでいる.組織内注入によるリンパ管の同定,センチネルリンパ節のマッピングは,既存の方法との比較試験の成果を踏まえ臨床導入され,標準的手技になった.肝胆膵領域では,蛍光胆道造影への利用,肝癌の同定,肝区域の描出,膵の手術への応用など目覚しい進展があり,今や,世界中に拡大している.蛍光検出機器は本手法における重要なツールであるが,軽量化,明視野での観察が可能なシステムの開発などが行われ,幅広い手術応用が展開されている.最近のトピックスとして術中にICG蛍光画像を臓器に直接投影するプロジェクションマッピングの技術開発が大きな注目を集めている.位置ずれを最小化したリアルタイム追従型の術中イメージングシステムとして,肝手術を中心に新しい幕が開きつつある.血流イメージングとして,吻合部血流を評価する手法としての臨床研究が行われている.心臓血管領域では,脈管系やグラフト内を流れる血液やリンパ液を可視化し,様々な術中評価に用いられている.さらに,組織灌流の評価にも応用されている.呼吸器外科領域では,病変の同定,区域の決定などに関する様々な研究が行われており,発展が期待されている.
本特集では,疾患領域や臓器別に蛍光ガイド手術の現状と展望について執筆をお願いした.最前線の情報,最先端研究の要点,標準的な手法や確立に至る経緯,また,課題,ホットな議論のポイントなどが,ピクチャーも用いて,簡明に紹介,論述されている.深い思案があり,熱意が伝わってくる.明日の蛍光ガイド手術に役立ち,ブロードな進展を考える上でたくさんのヒントが織り込まれている.
執筆者,編集関係者の方に深謝すると共に,是非ご一読いただければ幸いである.

 
利益相反:なし

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