[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (3745KB) [会員限定]

日外会誌. 126(2): 173-178, 2025


会員のための企画

外科医が知っておくべき重症心不全治療の現況―補助人工心臓を中心に―

東京科学大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管外科学

藤原 立樹

内容要旨
本邦における重症心不全治療は,ここ10数年間で目まぐるしい変化を遂げている.2011年に植込型補助人工心臓が保険適用される以前は,重症心不全の患者は体外設置型補助人工心臓を装着し,長期間入院するのが一般的であった.当初,補助人工心臓の適応は開心術後心不全(人工心肺離脱困難および術後早期心不全)であったが,次第に心臓移植へのブリッジ(Bridge to transplantation: BTT)としての使用が広がった.
植込型補助人工心臓の最新機種では,血栓症リスクが大幅に改善しており,治療成績の向上とともに,2021年には本邦でも長期在宅補助人工心臓治療(Destination Therapy: DT)としての使用が保険収載された.これにより,心臓移植適応の患者に限定されていた使用が拡大され,年齢や腎機能などの条件が緩和された結果,65歳以上の患者も治療対象に含まれるようになった.一方,米国では日本より約20年早くDTが認可されており,その結果,補助人工心臓患者の非心臓血管手術が増加していると報告されている.
心原性ショックに対する補助人工心臓を用いた治療戦略も大きく変化し,非開胸で装着可能な補助循環用ポンプカテーテルが多くの施設で頻用されている.
本稿では外科医が知っておくべき補助人工心臓を中心に,重症心不全治療の現況について概説する.

キーワード
重症心不全, 心臓移植, 補助人工心臓 Ventricular assist device(VAD), 心臓移植へのブリッジBridge to transplantation(BTT), 長期在宅補助人工心臓治療Destination therapy(DT)


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。