[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (692KB) [全文PDFのみ会員限定][検索結果へ戻る]

日外会誌. 124(2): 163-167, 2023


特集

糖代謝異常と外科医療

3.糖尿病患者の術前評価と手術リスク

山梨大学 第一外科

庄田 勝俊 , 河口 賀彦 , 赤池 英憲 , 市川 大輔

内容要旨
手術施行症例における糖尿病合併率は20%に上るとされていることから,糖尿病患者の術前評価や手術リスクについて理解しておくことは外科医にとって重要である.術前には,HbA1c,自己測定値やグリコアルブミンなどを参照し血糖コントロール状況を把握するとともに,網膜症,腎症,末梢神経障害や血管障害など糖尿病に関連した疾患の存在を評価する.HbA1cが8.5%以上の場合や糖尿病性ケトアシドーシス,高浸透圧高血糖状態は緊急手術でなければ数日間入院管理をした上で治療を検討する.周術期血糖コントロールの目標値については十分に確立されたものはないが,厳格な血糖コントロールが必ずしも術後生存率を改善しない可能性が示されていることから,低血糖リスクという負の側面を考慮し,多くのガイドラインでは血糖値は180mg/dL以下にコントロールすることを推奨している.高齢者では特に重症低血糖発症のリスクを考慮して,厳格な血糖コントロールよりも,安全性を重視した適切な血糖コントロールを行う.周術期糖尿病薬については,基本的に内服薬を中止し,インスリンで行うことが望ましい.少なくともメトホルミン,SGLT2阻害剤は中止し,スルホニル尿素薬も高容量であれば手術2〜3日前までに中止しておく必要がある.糖尿病患者では術前のリスク評価を行い,高血糖に伴う周術期合併症の予防を行うとともに,特に高齢者では低血糖を発症させない適切な血糖管理が重要である.

キーワード
糖尿病, 外科治療, 術前評価, 手術リスク

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。