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日外会誌. 124(1): 44-49, 2023
特集
独自の進歩を見せる日本の甲状腺癌治療学
7.局所進行甲状腺癌への取り組み
内容要旨甲状腺は気管喉頭移行部に位置し,反回神経を含む気道や食道と接する.このため甲状腺癌によるこれら周囲臓器への浸潤(隣接臓器浸潤)が進行すると,発声・呼吸・嚥下などに影響を与え,予後のみでなくQOLを低下させる.癌の浸潤は気道や食道の外側から始まり内方(内腔)に進展すること,また分化癌では進行が緩徐なことから,浸潤が表層に留まった状態(表層浸潤)で発見されるものが多い.逆に,進行が緩徐なため症状に乏しく,症状を自覚した時点で複数臓器に浸潤が及ぶものもあり,切除不能とされるケースも散見される.主な浸潤部位は気道・食道であり,分化癌の気道浸潤は6%,内腔に達する浸潤は1%程に認める.治療は表層浸潤に対しては,気管シェービングや反回神経部分切除などの機能温存手術が,内腔浸潤に対しては,内腔を含む完全切除および再建術の方針を取られることが多い.日本の甲状腺外科は,欧米の分化癌に対する甲状腺全摘といった画一的な治療とは違い,機能温存を重視した独自の発展を遂げてきた.これらは局所進行癌の治療についても当てはまる.症例数が少なく,多くは単施設からの後ろ向き研究のためエビデンスレベルは低いとされるが,反回神経浸潤の神経切断例に対する即時再建,反回神経切断例に対する二期的な音声改善手術は,本邦からの発信が多く,世界中で広く行われている.本邦の内分泌外科医や頭頸部外科医の治療への取り組みや成果について報告する.
キーワード
甲状腺分化癌, 局所進行癌, 表層浸潤, 内腔浸潤, 機能温存手術
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