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日外会誌. 122(3): 320-324, 2021


特集

乳癌診療の現状と課題

6.リスク低減乳房切除術の現状と課題

聖路加国際病院 乳腺外科・遺伝診療センター

喜多 久美子 , 山内 英子

内容要旨
遺伝性乳癌卵巣癌症候群へのリスク低減乳房切除術が一部条件下で保険収載され,需要が高まってきている一方で,臨床面での課題は山積している.本項では,リスク低減乳房切除術の現状と課題についてエビデンスと自験例をもとに考察する.第一に,本邦では臨床遺伝診療に携わる人員不足が顕著であり,充分な遺伝カウンセリングおよび診療連携体制の整備は急務である.第二に,保険適応について,現状では一定の適応条件つきでの承認であり,癌未発症者ではいまだ自費診療となっている.第三に,Occult cancerへの対策がある.RRM検体で,術前にわかっていなかった癌が検出される率は5~7%と少なからずあり,術前の綿密な画像検索,手術検体の病理検索法にも特有の認識を要する.第四に,HBOCへの画像サーベイランス(定期検診)であるが,現状では欧米のデータをもとに乳房造影MRIとマンモグラフィを併用した定期検査が推奨されている.MRIに関しては,人種差によって有用性に違いがある可能性もあり,日本人女性で最適なサーベイランス法に関する臨床研究が企画されている.最後に,BRCA以外の遺伝子変異への対応整備も,昨今の遺伝子パネル検査の普及によって急激に需要が高まっている.エビデンスが確立されていない遺伝子に対しても簡単に検査可能な世の中で,患者に行き場のない不安を与えることにならないよう,しっかりと検査前後の遺伝カウンセリングでのサポート体制を整えることが肝要である.

キーワード
遺伝性乳癌卵巣癌症候群, BRCA, リスク低減乳房切除術

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